認知症の種類はおもに4つ!治る認知症もあるんです。

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認知症とは脳の認知機能が低下し、日常生活を送ることが難しくなる状態ですが、その症状は様々で、一番多いアルツハイマー型の場合、初期症状として物忘れから発症したり、前頭側頭型(ぜんとうそくとうがた)認知症では人格が変わってしまい、非常識な行動をとってしまうといったように原因となる病気や障害される脳の場所によって現れる特徴が異なります。

今回の記事は認知症の種類別の特徴や原因をまとめた記事です。最後までお付き合いいただき、大切な方がどの型の認知症であるのかを正しく理解しましょう。

 

認知症とはどういう病気?

認知症では脳の機能が何らかの病気や障害によって正常に機能しなくなり、日常生活に支障をきたします。認知症自体が病気ではなく、元となった病気や原因によって引き起こされた状態のことを指します。

そのため、原因となる病気によって脳の細胞の壊れる場所が異なり、個人差はあるものの、一般的に壊れた場所によって現れる症状の特徴が変わってきます。

認知症の種類は稀な症例を含めると数多くありますが、代表的なものは4つです。

一番多い認知症は『アルツハイマー型認知症』、次いで『脳血管性(のうけっかんせい)認知症』、『レビー小体型(れびーしょうたいがた)認知症』と続き、約1%『前頭側頭型(ぜんとうそくとうがた)認知症』です。

基本的には認知症は治らないとされていますが、原因となる病気によっては進行を食い止めたり、治せたりする場合もあります。

 

認知症患者に一番おおいアルツハイマー型認知症

あなたも一度は聞いたことのあるアルツハイマーということば。アルツハイマー型認知症では、脳内に長年時間をかけてアミロイドβやタウタンパクという異常なたんぱく質が溜まっていきます。このタンパク質が脳の神経細胞を壊し、脳を委縮させてしまうことで、物忘れなどの認知症状がでます。

ゆっくりと神経細胞が壊れていくため、徐々に認知症の症状が進んでいくことが特徴です。高齢者に多いですが、若年性アルツハイマーと呼ばれ、64歳以下でも発症することがあります。

 

症状

主に記憶をつかさどる脳の『海馬』と呼ばれる部分から神経細胞が壊れていくため、初期症状として物忘れが発症します。その他に場所や日時、季節がわからなくなってしまう見当識(けんとうしき)障害がでます。季節感のない服を着てしまったり、見当識障害が進むと今いる場所がわからず家に帰れなくなったり、人物がわからず家族を他人と間違えてしまったりします。

他に、物事を順序立てて行うことができなくなり、例えば、料理を作る手順がわからなくなり今まで出来ていた料理が作れなくなったりします。他にも言葉が出てきづらくなったり会話が困難になったりします。

 

治療法

残念ながら壊れてしまった脳細胞を復活させる薬はありませんが、認知症の進行をゆるやかにする薬は存在します。アルツハイマー型認知症では早期発見・早期治療が良いとされていますので、お近くの医療機関に相談してみることをオススメします。

 

幻視やパーキンソン症状が代表的なレビー小体型(れびーしょうたいがた)認知症

1990年代に入ってから広く知られるようになった比較的新しい認知症のタイプです。脳の広い範囲にレビー小体(れびーしょうたい)というたんぱく質がたまり、神経細胞を徐々に壊していきます。こちらもアルツハイマー型認知症と同じで原因はわかっていません。大脳を覆っている神経細胞の集団である『大脳皮質』や中枢神経系を構成する重要な部位が集まる『脳幹』にレビー小体(れびーしょうたい)は多く現れます。

脳幹に多くできるとパーキンソン症状が出現するので認知症+パーキンソン病のような症状がでることが特徴です。

 

症状

パーキンソン病は手足が小刻みにふるえたり、身体が固くなり動かせなくなったり、表情がこわばったりする病気です。他には実際にいない人が見えたりする『幻視』や眠っている間に怒鳴ったり奇声をあげたりする異常行動があります。日や時間帯によってぼーっとしていたり、意識がハッキリしていたり調子の良し悪しがあるのも特徴です。

 

治療法

患者さんによって症状の現れ方が異なるので正しく診断されづらい病気です。パーキンソン病と診断された後に認知症状が出て、レビー小体型(れびーしょうたいがた)認知症と診断されることもあれば、アルツハイマー型認知症だと診断され、その後パーキンソン症状があらわれてレビー小体型(れびーしょうたいがた)認知症と診断されることもあります。

この問題点は『抗精神病薬薬剤の過敏症』の存在です。レビー小体型(れびーしょうたいがた)認知症には抗パーキンソン薬やアルツハイマー型認知症と同じ薬が処方されますが、副作用の影響で症状が悪化する場合があります。

例えば

幻視の症状から精神薬を処方される

実際にはレビー小体型(れびーしょうたいがた)認知症なので、副作用の影響で幻視が悪化

認知症に気づけずさらに精神薬を処方される

 

と悪循環におちいる可能性もあります。誤診をふせぐよう家庭での症状をよく観察し、専門の医療機関を受診して医師にしっかりと伝えましょう。

 

高血圧や糖尿病など生活習慣病が原因となっておこる脳血管性(のうけっかんせい)認知症

生活習慣病などが原因で起こる脳梗塞や脳出血によって脳の血管が詰まったり破れたりすることで脳の神経細胞が死んでしまい起こる認知症です。元となる病気が原因で再度脳の血管が詰まったりして神経細胞が死ぬことで認知症が進行します。徐々に進行するタイプとは異なり、階段状に症状が進行するのが特徴です。裏を返せば、原因となる病気を治せばそれ以上は認知症状が進まず予防が可能な認知症とも言えます。

 

症状

認知症の症状とは異なりますが、前提として原因となっているのが脳梗塞や脳出血なので障害の部位によって、運動麻痺や感覚障害、失語症などの言語障害、食べ物が上手く飲み込めなくなる嚥下(えんげ)障害、認知症の症状と同じような記憶障害や実行機能障害などの高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)が現れます。

そして、認知症の症状としては脳の血管が破れた・あるいは詰まった部分の神経細胞のみが壊れてしまうので、できなくなること・できることがハッキリ分かれることが多いです。例えば、物忘れをしていても、その人がしてきた仕事の専門知識などは覚えていることもあり、神経細胞が壊れていない部分に関しては正常です。このように無くなってしまった能力と残されている能力がまだらにある症状は『まだら認知症』と呼ばれ脳血管性(のうけっかんせい)認知症の特徴となっています。また、初期の段階であれば、認知症の自覚症状があったり、自分の感情を上手くコントロールすることが難しくなる感情失禁もあるため、戸惑いや落ち込みがみられることがあります。

 

治療法

今の所、認知症自体を治すことはできません。しかし、原因となる病気を治す、あるいは再発を予防するための治療薬に高血圧をコントロールする降圧剤や脳血流改善薬を使用する場合があります。また、第一の予防策としては、日頃の生活習慣を見直して、規則正しい生活や適度な運動、バランスの良い食事を心がけることが一番大切です。

 

人格が変わったり言葉が出てこなかったりする前頭側頭型(ぜんとうそくとうがた)認知症

脳の前頭葉と側頭葉の神経細胞が多く壊れてしまうことが特徴の認知症で指定難病に認定されています。TDP-43というたんぱく質が溜まったり、ピック球と呼ばれるものが脳神経細胞に溜まって引き起こされることがわかっていますが、なぜたんぱく質やピック球が溜まってしまうのかはわかっていません。また『ピック病』と呼ばれる病気もこの認知症に含まれます。物忘れというよりは、人格が変わってしまったり人への配慮ができなくなることが多いため、家族が認知症とは気づかず発見が遅れてしまうケースもあります。

 

症状

前頭葉は思考や感情の表現をつかさどる機関で、側頭葉は言葉の理解、聴覚、味覚の他、記憶や感情をつかさどる機関です。そのため、物忘れといったことよりは他人の気持ちが理解できなかったり、理性的な行動をとることができなくなり人格が変わってしまい、非常識な行動が目立ちます。例えば、万引きや無賃乗車をしてしまっても全く悪びれる様子がありません。また相手が話の途中にも関わらず突然立ち去ったりもすることがあります。

言葉を発したり、理解したりすることへの影響も大きいため、知っているはずの言葉も意味が分からなくなったり、呂律が回らずつまったりします。話せたとしてもスラスラと言葉は出てくるが内容が全く意味不明の場合もあったり、文字を読み違うこともあります。ご本人の自覚がない場合が多く、これらの事を悪気なしに行ってしまいます。

他にも、同じ行動を繰り返す『常同行動』が挙げられます。例えば毎朝起きればかかさず公園に行き、草むらの草をビニールに入れて持って帰ってからでないとご飯を食べないなどの行動が挙げられます。

 

治療法

他人を困らせる行為をしたり、動けなくなるまで同じ行為を続けてしまったり、またはうつ傾向がみられる際には、介護者に負担が増大したり、ご本人にとっても身体的・精神的な負担が大きくなります。前頭側頭型(ぜんとうそくとうがた)認知症を改善させる薬はありませんが、このような場合には、抗精神病薬や睡眠薬が処方されることもありますが、副作用が出ることもありますので、主治医との連携をかかさないようにしましょう。

 

治る認知症もあります

認知症と同じ症状がみられても、原因となる病気が完治することで、症状が改善したり、進行が止まる病気もあります。

 

正常圧水頭症

脳と頭蓋骨の間にある脳脊髄液(のうせきずいえき)という水が脳を守るクッションの役割をしています。脳脊髄液(のうせきずいえき)はいつも新しいものが作られ循環しているのですが、なんらかの原因でうまく水が交換されず溜まってしまい、圧迫して脳機能をマヒさせてしまう病気です。シャント術という手術を行うことで治る可能性があることがわかっています。

 

慢性硬膜下血腫

軽く頭を打ってしまったことなどが原因で脳の血管が破れ数か月ほどかけてゆっくりと血が溜まり、脳を圧迫してしまう病気です。手術をすれば治る可能性があります。

 

甲状腺機能低下症

甲状腺は首の前側、のどぼとけのすぐ下にあり、体を元気にするホルモンを出す機関で、このホルモン量の調整ができなくなってしまう病気が甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)です。

ホルモンを補う薬を飲むことで治る可能性があります。ぼーっとしたりする症状からアルツハイマー型認知症と混同されてしまうケースもあります。その際に抗認知症薬を飲んでしまうと副作用がでる場合があるので注意が必要です。かかりつけ医に「甲状腺機能低下症の疑いはないでしょうか?」とこちらから切り出すことも視野にいれて診てもらいましょう。

 

まとめ

認知症の種類によって症状が異なってくることがおわかりいただけたかと思います。認知症状が出るようになってしまった原因や他の症状がないかをチェックすること、認知症の方の行動の特徴をしっかりと観察し、主治医に伝えることで、誤診を防ぎ、正しい治療を受けるようにしましょう。専門家の視点といつもそばで見守っている介護者の方の視点が合わさってこそ、最良の治療に繋がります。今回の記事をきっかけに、認知症の方を見つめなおすきっかけになって頂ければ幸いです。

 

髙橋 慶香(たかはし ちか)

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おじいちゃんおばあちゃんが大好きな作業療法士×福祉ネイリスト。その他、医療福祉系を中心としたWEBライターとしても活動中。モットーは「心が動けば体も動く」。

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