認知症を知ろう②

前回は認知症の変遷と原因別特徴をあげましたが今回は認知症の症状や認知症に似た病気についてお話しします。

認知症の評価方式、長谷川式認知症スケール

認知症はなんらかの原因から脳機能が低下し、生活する上で支障が出る状態が6ヶ月以上継続する状態にあることです。
ではどの程度脳機能が低下したら認知症と診断されるのでしょうか?

少し物忘れがあるだけで認知症なのか?また、道に迷うことが多くなったから認知症なのか?回数は?頻度は?

こういった疑問を数値化して認知症の程度を測るものが【長谷川式認知症スケール(HDS-R)】です。

九つの設問があり、正答すれば1点、誤答すれば0点といった具合で、30満点の加点方式で評価します。

19点以下は認知症の疑いあり
11-15点なら中程度の認知症
5-10点ならやや高度の認知症
0-4点なら高度の認知症

と評価します。

質問内容はお年はいくつですか?など健常な方なら簡単な質問ばかりです。

あくまでもこの検査は目安となるものでこの点数が悪いから即座に認知症と診断される物ではありません。

また、実施に至ってはご家族や本人に内容の説明と了解を得る必要があります。

認知症にはほぼ全ての人におこる中核症状と性格や環境によって生じる周辺症状がある。

認知症の症状には大きく分けて中核症状と周辺症状(BPSD)があります。

脳の細胞が病気や障害により壊れてしまい、その細胞が元々持っていた役割を果たせなくなってしまったことで起こる症状を【中核症状】といいます。

認知症の程度により差はあれどほぼ全員にこの症状が現れます。

一方で中核症状によって引き起こされる二次的な症状を【周辺症状(BPSD)】といいます。

これは中核症状とその人の性格、周囲の環境などが相まって影響するもので心が落ち着いている状態の方であれば症状が出ない方もいらっしゃいます。

逆に自分自身の物忘れや今まで出来ていたことができないことによる憤りを感じている方はBPSDの症状がでやすいです。

認知症の症状-中核症状-

記憶障害

年相応の物忘れであれば、ある出来事が起こったことに対して断片的に思い出せないことはあれど出来事自体を忘れてしまうことがありません。

しかし認知症による記憶障害はその出来事が起こった部分だけ記憶からポッカリ抜け落ちてしまいます。

認知症発症当初はまず本人が「なにかがおかしい」とこの異変に気づき、傷ついたり苦しい思いをします。自信がなくなり外出を避けがちになります。

年齢を重ねることによる物忘れ(良性健忘)と認知症による記憶障害を間違わないようにしましょう。

見当識障害

今現在どのような状況か正しく把握する能力が欠如している状態です。大きく分けて時間、場所、人物の3つがあり、起こる障害の順序もこの通りと言われています。

・時間の見当識障害
時間を聞いてもわからなくなったり、年月日、曜日、季節がわからなくなったりします。季節感のない服装で出歩いたりする行動も見られます。

・場所の見当識障害
道に迷ったり今どこにいるのかわからなくなったりして家に戻れなくなったりします。

よく徘徊なんて言葉が使われますが本人が意味も無く出歩くことは無く、元々散歩など目的があって出歩いている最中に

なぜ外に出てきたのかわからなくなったり、道に迷ったりしているだけなのです。

・人物の見当識障害
家族を見てもだれかわからなくなったりする症状です。周囲の人達と自分の関係を把握できなくなります。

鏡に映っている自分を他人と勘違いして話しかけたりすることもあります。

理解・判断力の低下

考えて行動することが難しくなり、2つ以上の物事が重なると上手く処理できず、理解が難しくなります。

推測しなければいけない曖昧な表現も理解が難しいので具体的な表現で話しかけましょう。

×「最近は寒いから気を付けてね」
〇「外に出るときはコートを着ていってね」

実行機能障害

ものごとを順序立てて考えて行動に移すことが難しくなる障害です。

例えばカレーを作るために材料を選び、スーパーに買い出しにいく。そして野菜を洗い皮を剥いて炒め、ルーを入れるなどという手順を考え実行することが難しくなります。

洗濯をしてから干すなどの行為も簡単なように思いますがうまくできなくなったりもします。日常生活がうまく進まなくなります。

失語

「あれ」「それ」などの言葉が多くなり、なかなか言葉が出てこなかったり、今まで読めていた漢字が読めなくなったりします。

失行

手足にケガや障害はないのにもかかわらず一連の動作ができなくなってしまうことです。
例えばいつも結べていたネクタイが結べなくなったりします。

失認

目や耳、鼻や舌などの感覚が麻痺していないにもかかわらずまわりの状況を把握できなくなる症状です。

例えば「近所にすむ息子夫婦が孫を庭で遊ばせている」という状況であれば

「近所の子供が無断で庭に侵入している」と誤認してしまいます。

視力は正常なのにそれを整理して把握することが難しくなります。

認知症になれば全ての人にこのような症状がおこりますが「何もできない」のではなく手助けがあればできることあります。

例えば料理工程で野菜は切ることが出来てもお米が炊けないのであれば炊飯スイッチを押してあげたり少しお手伝いすることで

出来ることが増えたりもするんです。少しずつ出来ることが増えてくると以前のように自信をとりもどすことで外出できるようになったり

心が落ち着くことで暴力的な行動が減ったりします。

認知症の症状-周辺症状BPSD-

BPSDはBehavioral and Psychological Symptoms ofDementiaの略称です。かつて問題行動とか異常行動と呼ばれていたものですが

今はそういった言葉は使わず、認知症の行動・心理症状と呼んだり周辺症状と呼んだりします。

BPSDには行動症状と心理症状に分けられます。

・行動症状
徘徊や帰宅行動、暴言、暴力、ケアへの抵抗、不潔行為、異色など

・心理症状
幻覚、妄想、不安感、抑うつ症状など

があります。

BPSDの症状ばかりに目を向けると対処ばかりになってしまいますが、大事なのはその背景を知ることが大事です。

それぞれの方の心理的要因、環境的要因、身体的要因、社会的要因を分析し、その人にとって安心や快い環境を作っていってあげることが大事です。

認知症とまちがえやすい病気 うつ病とせん妄

うつ病

うつ病は、もの忘れや計算間違いが多くなる、不安や焦燥感、ときに死を考え
るほどの絶望感につながる危険性があり、また意欲の低下は、外出の機会を奪っ
てしまい、社会性の低下をきたすことなどがあります。

せん妄

せん妄の特徴は、発症が急激であり、幻聴や幻覚が数時間から数週間症状が持続して、日常
の生活機能障害が出現することです。また症状が、一日のうちで変動することも特徴です。
急に起こるのでいきなり認知症になった!と勘違いしてしまうこともありますが、認知症ではないので治る症状です。

早期治療

もの忘れ、気分の低下などが気になりはじめたら早期にかかりつけ医や専門医に
受診することでが大切です、それは疾患によって認知症状が治たり進行を緩やかに
できることがあるからです。

放置しないで1日でも早く医者に見せた方がいいです。さまざまな疾患が原因で起こる認知症ですが、その疾患には治る物もあります。
硬膜下血腫、脳腫瘍、正常圧水頭症、ビタミンB12欠乏症、甲状腺機能低下症、肝性脳症、脳炎などは早期であれば治る可能性も残されています。

またアルツハイマー型認知症は治すことはできませんが症状を送らせる薬があります。こちらも早期に医者にかかることでできることが維持され進行を遅らせることができます。

まとめ

福祉ネイルご利用していただく方の中には元気な利用者様はもちろん、中には初期段階の認知症患者様もおられます。

さきほども言ったように本人さんが快いと感じる時間をネイルしている間だけでもお作りできるのではないのか?と考えます。

心理的要因を少しでも下げ、周辺症状を減らしたりできるようご家族様や介護者様のお力になりたいですね。

番匠谷光士郎

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日本保健福祉ネイリスト協会の広報を担当している。32歳の男性ライター。理事長と共に全国各地へ飛び回って仕事をしている。

プロフィール

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