介護現場で注目!高齢者向け美容レクリエーションとは

高齢者人口が年々増加している日本において、介護現場では新しい取り組みがどんどん取り入れられています。デイサービスや入所型介護施設などでは、日々スタッフがレクリエーションを提供していますが、レクリエーションのバリエーションも多様化され、趣向を凝らした内容が増えてきているのをご存知でしょうか。
今回は、介護施設の利用者からも喜ばれる美容レクリエーションをご紹介しながら、その効果についても解説していきます。
高齢者になぜレクリエーションが必要なのか
介護や支援が必要な高齢者が利用する介護施設において、通所施設、入所施設問わずに必ずと言っていいほどレクリエーションが行われています。
なぜ高齢者にレクリエーションが必要なのか。その目的と理由を解説していきましょう。
身体機能を維持・向上するため
高齢者は年齢を重ねると共に活動量が減り、筋力や体力が低下していく方が多いです。施設に入所している場合はなおさら、身体機能の低下が懸念されます。
そのため、日常にレクリエーションを取り入れることで身体を動かす機会を作り、身体機能を維持・向上させるという目的があるのです。レクリエーションを行う頻度は施設によって異なりますが、身体を動かすレクリエーションは毎日行う施設もあります。そのことからも、高齢者の身体機能を維持・向上させるためにレクリエーションを行う意義は大きいと言えるのです。
脳の活性化
身体機能を維持・向上することと同じくらい重要なことは脳を活性化させるということです。65歳以上の高齢者のうち、6人に1人程度が認知症を発症しているとも言われている現代で、介護施設において脳の機能を維持するためのアプローチは必要不可欠となっています。
特に入所している高齢者においては、施設内で過ごすことが多いため、日付の感覚や季節感を肌で感じられる機会が各段に減ってしまいます。そのことから認知機能が低下する場合も多いため、日頃から脳を活性化できるレクリエーションを行うのです。
コミュニケーション・交流の機会として
介護施設では、ほとんどの場合集団での生活となります。利用者同士、または施設スタッフと良好なコミュニケーションをとることで、施設利用をより楽しんでいただくことに繋がります。レクリエーションでは自然と他者との交流が生まれ、会話のきっかけにもなるため、プラスのコミュニケーションが生まれるよう、介護スタッフも日々趣向を凝らしているのです。
日常の楽しみとして
外出の機会や自分で行えることが減ってきてしまう高齢者が多い中で、日々の楽しみとしてレクリエーションを行う価値は大きいのではないでしょうか。
高齢者の身体機能や認知機能を維持することはもちろん重要なことではありますが、レクリエーションを行う際の根本の理由として、“利用者が楽しめる事”という視点が大切です。楽しみながら、身体機能や認知機能を維持できるというのがレクリエーションを取り入れる意義でもあります。
高齢者向けレクリエーションの種類
高齢者向けのレクリエーションにはそれぞれの目的によっていくつかの種類に分けられます。本記事では代表的な4つを具体例を交えてご紹介していきましょう。これらの種類は組み合わせることで、より楽しみや効果を高めることもできます。
身体を動かすもの
身体を動かすレクリエーションには、シンプルに体操をしたり、ゲーム感覚で個人または集団で楽しみながら行うものなどさまざまなものがあります。利用者の介護度や身体機能に合わせて難易度を変えていく工夫も必要です。
【身体を動かすレクリエーション例】
- 音楽や映像に合わせた〇〇体操
- 風船バレー
- 輪投げ
- ボール遊び
- ボーリング
頭を使うもの
頭を使うレクリエーションでは、計算問題やマルチタスクなど、脳トレの要素を含んでいます。脳トレの要素はいろんなレクリエーションに取り入れることができるため、既存のレクリエーションに一工夫するだけで、高齢者に対してより効果をもたらすことがあります。
【頭を使うレクリエーション例】
- 計算ドリル
- パズル
- 将棋
- なぞなぞ
- マルチタスクトレーニング(例:歌を歌いながら手をたたく、旗揚げゲームなど)
指先を使うもの
指先を使うものとしては、手芸や工作など個人作業が多いです。隙間時間で各自行えたり、それぞれの好みやレベル感を調整しやすいため、レクリエーションとして取り入れやすいというメリットがあります。また、工作や手芸などのレクリエーションは、作品として形に残るため、達成感が得られる、飾ったり人に贈るなどして喜んでもらえるという良さもポイントの一つです。
【指先を使うレクリエーション例】
- 折り紙
- 塗り絵
- 工作
- 手芸
気分転換や楽しめるもの
レクリエーションを行う目的として、楽しむということが大きなポイントです。イベントや季節の行事を楽しんだり、リラクゼーションや日常の楽しみとしてレクリエーションを取り入れることで高齢者のQOLが向上していく一助となるのではないでしょうか。
【気分転換や楽しめるレクリエーション例】
- 音楽鑑賞やカラオケ
- アロママッサージ
- アニマルセラピー
- 化粧療法
- ネイル
近年注目の美容レクリエーションとは
高齢者向けのさまざまなレクリエーションがある中で、近年では化粧療法や美容レクリエーションが注目されています。
どんなことを行うのか、そしてそれを行うことでどんな効果が期待されているのかをご紹介していきます。
メイクやヘアケア、ネイルをレクリエーションとして取り入れる
訪問美容のプロとして美容師やネイリストなどが施設を訪問し、高齢者の方にエステやメイク、ヘアカット、ネイルなどを施します。高齢者に対するレクリエーションとして、通常の美容サービスよりも、より“健康”や“楽しみ”というポイントに重きをおいて実施する場合が多いです。
そのため、美容レクリエーションの場合は高齢者が化粧やネイルを施術してもらう場合や、アドバイスを元に高齢者自身が行うなど、方法によってキレイになる喜びだけでない効果も期待されています。
美容レクリエーションの効果
近年では、高齢者に与える化粧療法やネイルの効果が示されています。
化粧療法では、外見を美しくすることで心が前向きになるだけではなく、自分で化粧をすることでの脳の活性化や、上肢機能の維持、そして、唾液の分泌がアップするという報告もされており¹⁾、身体機能や心の健康寿命を伸ばす効果が期待されています。
また、ネイルを行う場合には、鏡などを必要とせず、キレイになった自身の指が自然と視界に入り、中長期的にキレイが持続するというメリットがあります。ネイルを行うことで、認知症高齢者のQOL向上やBPSD(行動心理症状)の軽減に効果が期待できるという研究もなされているのです。
どちらに関しても、化粧やネイルなどをレクリエーションとして取り入れることで、高齢者の気持ちが明るくなり、他者とのコミュニケーション機会の増加や、ADL・QOLの維持向上などプラスの効果が期待されるため、介護施設にも積極的に取り入れられている実状があります。
まとめ
日本では高齢化率が上昇していると共に、介護施設の特色やサービスの質も年々向上してきています。介護施設として、利用者の方に喜んでいただくのはもちろん、楽しみながら身体機能や心の健康を維持してもらう取組みは重要です。
高齢者一人ひとりが人生100年時代をその人らしく生きられるようサポートするために、介護現場と美容の専門家たちが協力し合うことで、更なるサービスの質の向上を目指せるのではないでしょうか。
日本保健福祉ネイリスト協会では、高齢者や障がい者の方に向けたネイルサービスを行うために学んだ福祉ネイリストが全国各地で出張訪問しておりますので、ぜひ活用してみてください。
【参考サイト】