介護時の声掛けのNG例とは?現場で重視される理由やOK例と一緒に解説

介護時の声掛けのNG例とは?現場で重視される理由やOK例と一緒に解説

介護の現場では、通所・入所する高齢者や障がいのある方に対して移動介助、食事介助、入浴介助、排泄介助等のケアを提供しますが、その前後や合間には必ず「声掛け」を実施します。

そこで今回は、介護や利用者様とのコミュニケーションの基本となる声掛けについて、具体的なNG例や知っておくべきタブー、注意点の他、介護現場で声掛けが重要視される理由を解説。また併せて、介護をする際に積極的に行ってほしい良い声掛けの例も紹介していきます。

介護を行う上で声掛けは非常に重要!その理由は?

介護を行う上で声掛けは非常に重要!その理由は?

あいさつ等の声掛けは、人間同士のコミュニケーションの基本です。それは、介護者と要介護者という2人以上の人間が密接に関わり合う介護の現場においても同様であり、声掛けや会話を通して信頼関係を築くことは、各種の介助やケアをスムーズに実施するために欠かせません。

例えば、よく知らない人に突然体を触られたり、口に食べ物を入れられたら、どう感じるでしょうか。ほとんどの人が、そのような状況に恐怖や苦痛、不安を感じることと思います。

このように、信頼できていない相手から十分な声掛けもなく提供される一方的な介護は、要介護者にとって大きな苦痛となることが少なくありません。また介護時に抵抗や拒否をされると、余分な時間や労力がかかるようになるため、介護者にとっても負担が大きくなります。

介護時の声掛けは、介護者と要介護者が互いにコミュニケーションを取って信頼関係を築き、介護にかかる負担を減らすために必要不可欠なものだと理解しておきましょう。

介護のために声掛けをする際のポイント

介護時に声掛けが重要視される理由がわかったところで、次は、こちらの声掛けを要介護者にきちんと認識してもらい、コミュニケーションを取るためのポイントを紹介していきます。

介護に伴う声掛けの際に意識すべきポイントや注意点は、以下の通りです。高齢の方や障がいのある方の介護に伴い、適切な声掛けをするための基礎知識として覚えておいてくださいね。

  • 視野が狭くなっていることも多いので、正面から視界に入って目線を合わせる
  • 耳が遠い方でも聞き取りやすいように、低めの声でゆっくり、はっきりと話す
  • 緊張感が伝わったり、怖い印象を与えないように、できるだけ明るい表情で話しかける
  • 言葉だけで意思疎通を図るのが難しい時は、ジェスチャーを加えたり、背中や手をさするといったスキンシップも織り交ぜてコミュニケーションを取ってみる
  • ケアの前には必ず声掛けをして、これから行うことや介助の内容を説明する
  • ケア中も利用者様の様子を見ながら、状況の報告や意思確認のための声掛けをする
  • ケアが完了した後も、必ず声掛けをして介助や処置が終わったことを伝える
  • 基本的に敬語で、介護職員ではなく要介護者を主体にした話し方を意識する

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介護時の声掛けにおける5つのタブーと具体例

介護時の声掛けにおける5つのタブーと具体例

ここからは、介護時の声掛けとして不適切とされている5つの伝え方について、それぞれ例文と一緒に紹介していきます。介護を提供する際に、以下のような声掛けの仕方になることのないように、しっかりと確認しておきましょう。

①指示

「じっとしてください」「ここに座っていてください」等の指示は、要介護者への声掛けとしては不適切だとされます。何かしてほしいことがある場合でも、指示口調での声掛けは避けて「○○していただけますか」など、依頼やお願いをするような言い方を心がけましょう。

②禁止

「外に出ちゃダメ」「○○してはいけません」等、要介護者の発言や行動を禁止するような声掛けも介護現場においてはタブーです。

ただ、高齢者や障がいのある方を危険から守るために、介護職員が要介護者の行動を制限しなければならない時もありますよね。そのような場面での対処法としては、禁止するような言い方にならないように、まずは「どうしましたか」と問いかけたり「それは危ないので、あっちで別のことをしましょう」などと言い換えると良いでしょう。

③強要や命令

指示よりも強く相手の行動を制限・支配するニュアンスのある強要や命令口調も、介護時の声掛けとして適切ではありません。具体的には「早くしなさい」「そこに座りなさい」などの伝え方が強要や命令にあたり、指示と同様に依頼する形へ言い換えるのが望ましいとされます。

④詰問

相手の言動を責めるニュアンスがある詰問も、介護時に行うべきではありません。困った行動をしてしまった場合は、「どうしてこんなことをしたの」などと詰問するのではなく、まずは相手の行動や気持ちを受け入れ、その上で起こったことの事実確認をするようにしましょう。

⑤否定

要介護者の言っていることを頭ごなしに否定すること、また「臭い」「汚い」等の相手の尊厳や人格を否定するような言葉遣いも、もちろんタブーです。自分のことを否定されるのは、誰にとっても悲しいもの。また傷ついた時の感情は、長く心と記憶に残ってしまうものです。

相手のことを否定してばかりいると、信頼関係が築けないだけでなく、顔を見ただけで怖がられたり嫌がられるようになるかもしれません。お互いの介護負担を軽減するために、また高齢者や障がいのある方にとって、介助の時間が少しでも快適なものとなるように、否定的な言葉は使わないようにしてください。

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他にもある!介護時にNGな声掛けの例

ここまでに見てきた5つのタブー以外に、介護時の声掛けでNGとされる表現・伝え方の代表的なものとしては、「上から目線の声掛け」と「意志を無視した声掛け」の2つが挙げられます。

そこで以下からは、それぞれに該当する声掛けの具体例について、NGな声掛けが発生しやすいシチュエーションと一緒に見ていきましょう。

尊厳を軽視した上から目線の声掛けの例

  • 食事介助の際に「あーんして」と声掛けするなど、呼び捨てやため口、幼児言葉で話す
  • 排泄介助や入浴介助の際等に「うわー汚い」「きれいにしてあげる」などと声掛けする
  • 「仕事に行く」という認知症の方に対し、「仕事はもうとっくに辞めたでしょう」などと正面から否定する

本人の意志を無視するような声掛けの例

  • ケア前の声掛けの際に、介護者主体でいきなり「はい、立ちますよ」と言って触れる
  • 本人が嫌がっているのに触れたり、「時間だから」と言って入浴介助や着替えをする
  • ケア中に不快そうな表情をしているのに、無視して「我慢してください」などと言う

上記はいずれも、介護職員の「ケアしてあげている」という気持ちと、介護を受ける方の意志や尊厳を軽視する心から生まれる発言です。

介護をしている時には、他のタスクや仕事に追われて時間的・精神的に余裕がなくなることも多いと思います。日々のストレスや疲労から適切な声掛けが難しくなることもあるかもしれませんが、介護を受ける方もご自身と同じく尊厳を持った人間であること、高齢者の場合は人生の先輩であることも忘れないようにしましょう。

介護時に積極的に行いたい声掛けのOK例

介護時に積極的に行いたい声掛けのOK例

ここからは、介護をする際に積極的に実践したい良い声掛けの例について紹介していきます。

タブーやNGな声掛けの例と併せて確認して、高齢者や障がいのある方の介護をする際にうまく役立ててくださいね。

「安心感のある言葉」を使った声掛けの例

介護を受ける高齢の方は、加齢によって身体の自由が利かなくなることや認知症で記憶が曖昧になることに、不便さや不安を感じています。そのため介護の声掛けにおいては、以下に紹介するような要介護者が安心する言葉や言い回しを積極的に使うことが推奨されているのです。

  • 「今から体に触りますよ」「車いすを押していきますからね」など、ケア前にこれから何をしようとしているのか、わかりやすく説明・予告する。
  • ケア中には、要介護者の表情を見ながら「大丈夫ですか」「痛いところはないですか」などと声をかけて、中止も含め柔軟に対応する。
  • 認知症の症状から「財布が取られた」と話す方には、本人の言うことを尊重して「それは心配ですね。一緒に探しましょうか」などと声掛けする。
  • 「仕事に行く」という人には「日曜日ですからお休みですよ」と言うなど、言葉が持つイメージを利用して要介護者が落ち着くよう声掛けする。
  • 禁止の他、入院やけが、警察等のトラブルをイメージさせるような言葉の使用は避け、「旅行」や「ぶつけた」など不安感の少ない言葉に言い換える。
  • 要介護者を安心させるために言ったことを「嘘じゃないのか」と指摘されたら、「私が勘違いしていたようです、すみませんでした」と謝るなどして誠実に対応する。

明るい気持ちにさせるための声掛けの例

高齢になると記憶力が落ちるため、直近の出来事を忘れてしまうこともありますが、出来事に対して抱いた感情は残りやすいと言われています。そこでおすすめしたいのが、ケアの前後を中心に、以下に紹介するようなポジティブな印象を与える言葉で声掛けすることです。

介護される、ケアを受けることと「楽しかった」「心地よかった」「うれしかった」等の前向きな感情の記憶が結び付けば、次回以降はスムーズに介助できるようになるかもしれません。

  • 朝のあいさつの際には名前を呼び、さらに「よく眠れましたか」「良い天気ですよ」などと話しかける。
  • 就寝時には「ゆっくり休んでくださいね」などとやさしい印象のある言葉で声掛けし、もしあまり眠れなくても咎めない。
  • 食事の際には、少しでも食事が楽しい時間になるように「今日のメニューは○○ですよ」「おいしいですか」などと声をかける。
  • リハビリや介助の後には、「先週よりも動けるようになりましたね!」と褒めたり、「たくさん食べてもらえて嬉しい、ありがとうございます」など感謝の気持ちを伝える。

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介護時の声掛けは、介護する側と介護される側の世界につながりを作るための大切なツール

介護時の声掛けは、介護する側と介護される側の世界につながりを作るための大切なツール

人間関係は、言葉選びによって深まることも壊れてしまうこともあります。これは介護業界においても同様で、信頼関係を築いてスムーズな介護が提供できるか、そして要介護者のQOLを高められるかは、介護職の方の声掛けにかかっていると言っても過言ではありません。

また丁寧な声掛けは、介護される側だけでなく介護する側にも介護の負担軽減というメリットをもたらしてくれます。自分が介護される立場だったら、自分の家族が介護を受けるならどのように声掛けしてほしいかを想像して、毎日の声掛けの仕方を工夫してみるとよいでしょう。

なお、一般社団法人 日本保健福祉ネイリスト協会では、高齢者や障がいのある方々に楽しみや喜びを感じていただける機会の一つとして、福祉ネイルというサービスを提供しています。

福祉ネイルとは、ご要望に応じて介護施設等やご自宅に伺い、その方のお身体の状態に合った施術を一般的なネイルよりも短時間で提供するものです。施術中には基本的に敬語を常用してお声掛けする他、特に高齢の方に対しては人生の大先輩であり、高度経済成長期の日本を支えてくださった方々であるという尊敬の念を持ってコミュニケーションを進めます。

「施設での美容サービス提供に興味があるが、介護対応に不安がある」「レクリエーションの一環として、利用者様への美容サービスの提供を検討したい」等とお考えの際は、ぜひ当協会までお気軽にご相談ください。

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