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認知症の方が怒る原因はなに?不安を取り除き安心感を与えることが大事

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認知症の方を介護している中で、「暴力」「暴言」というのは、介護者にとって身体的にも精神的にもとても大きなダメージを受ける事象の一つだと思います。

実際に暴力を振るわれた方もいらっしゃるでしょうし、もし自分の親が暴力を振るうようになったらどうしよう?と心配されている方も多いと思います。

この記事では、なぜ認知症の方が怒りっぽくなってしまうのか理由を知り、対処法や予防法についてご紹介いたします。一人で悩みを抱えこまず、こちらの記事を参考にしていただけますと幸いです。

認知症の方が暴言暴力を振るう理由

認知症になった方すべてが暴力を振るうわけではありません。暴力をふるうのにはご本人なりの理由があります。その理由は、人それぞれその人の性格や人間関係、生活環境などの小さな出来事が重なって起きることが多いです。

大変な介護の中で一呼吸おき、怒るに至ったご本人の心情を一つ一つ思い返してみると、きっと見えてくるものがあると思います。

具体例を交えてご説明する前に知っておいてほしい認知症の基礎知識をご紹介いたします。

認知症の主な症状とは

中核症状

まず大事なことは、老化によって起こる「物忘れ」と認知症は異なり、認知症は脳の神経細胞が破壊される病気だということです。脳の神経細胞の破壊によって直接的に起こる症状・障害のことを「中核症状」と呼びます。

中核症状の中には、

〇起こった事柄自体を忘れてしまったり、新しいことを覚えることが難しくなる記憶障害

〇季節感がわからない、今がいつなのか、ここがどこなのかがわからなくなってしまう見当識障害

〇順序よく作業をすることができなくなったり、やり方がわからなくなってしまう実行機能障害

〇言われたことがなかなか理解できない、どう対処した方が良いかがわからなくなってしまう理解力・判断能力障害

〇言葉が上手く話せなくなってしまう失語

などの症状が挙げられます。

 

周辺症状(BPSD)

中核症状に対し、BPSDと呼ばれる周辺症状は、中核症状をきっかけにその方の性格や生活環境・関わる人との関係が相まって現れる症状のことを指します。そのため、認知症を発症しても、穏やかに過ごす人もいれば、暴力的になったり、介助量が増える方もいます。かつて問題行動や異常行動と呼ばれていたもので、介護者の方が困る事象は周辺症状として現れることが多いです。

周辺症状の代表的なものは、

〇屋内外をふらふらと歩きまわってしまう徘徊

〇声かけに対して急に怒り出したり、気が動転して攻撃的になる暴言・暴力

〇おむつや排便をいじったり、周囲をよごしてしまう不潔行為

〇介護を嫌がる拒否

〇何もする気にならずぼーっとしたり、落ち込みやすくなる抑うつ

〇見えないものが見えたり、聞こえたように錯覚したり、実際に起こっていないことをあったことのように感じてしまう幻覚・妄想「ここにお金をしまっていたはずなのに!」「嫁が盗んだ」などの物とられ妄想は認知症によくみられる症状のひとつです。

 

このように、周辺症状は介護負担を大きくするだけではなく、精神的負担も増大させます。しかし、記憶障害があったり、事実とは異なった認識をしてしまうことのある認知症の方でも、これらの周辺症状が生じる背景には、その人なりの理由が隠れています。

認知症を発症し、暴力的になってしまう方。その方は、記憶障害や理解力の低下により、その場の状況を理解することが苦手で、困惑してしまうことがあります。もしくは、思うように物事ができなくて自分に苛立っているかもしれません。そんな状況の中で、急に体を触られたり、わけのわからないこと(介護者にとっては説明しているつもりでも)を言われ続けると感情をコントロールすることができず、自分の身を守るために暴力を振るってしまうのです。

 

暴力にいたる要因は環境や生活習慣などの些細な出来事の積み重ねから

ではなぜ暴力を振るってしまう方がいるのか実際の事象を用いて理由を考察してみましょう。

事象(Aさんの家庭で起こった出来事)
ある日、財布をしまった場所を思い出せず、一日に何度も同じ場所で財布を探すようになってしまった認知症のAさん。自分の娘に相談するも、「そんなものは知らない」と相手にされなかった。
それから毎日毎日財布の場所を聞いてくるAさんに娘さんは精神的にまいってしまい、「いいかげんにして!」と大声をあげてしまう。その言葉を受けてAさんはその場でパニックになってしまった。そしてある日を境に家族を信用できず、他人と間違えるようにもなってしまった。
認知症が進行してしばらく経ったある日、オムツの取り換えのためにAさんの服を何も言わずに脱がそうとした娘さん。ところが突然Aさんが娘に殴りかかり大声で怒鳴るようになってしまった。

 

理由1:娘に相談するも、「そんなものは知らない」と相手にされなかった。

娘さんにとって何十回目に言われたことでも、ご本人にとっては1回目の訴えなのです。大事な財布をなくし、不安が募る中、「知らない」と一蹴されたことで不安や混乱を助長させてしまうことがあります。

 

理由2:「いいかげんにして!」と大声をあげてしまう。

大声を出したことでパニックになってしまい、より状況判断が難しくなります。「いいかげんにして!」という意味がAさんには理解できず、自分は悪くないのに一方的に怒られたと認識してしまったのかもしれません。

また、この出来事をAさんが忘れてしまったとしても、自分のことを理解してもらえなかった、怒鳴られたという負の感情のみが残ってしまいます。こういった感情が積み重なることでAさんは娘さんを見ると『なぜかあの人と会うと嫌な気持ちになる』と不信感を覚えていきます。そうなってしまうとコミュニケーションや適切な介護ができなくなってしまいます。

 

理由3:おむつの取り換えのためにAさんの服を何も言わずに脱がそうとした。

状況判断が難しいことや、今は何時で何をする時間かということがわからないご本人に、声かけや説明をせず服を脱がそうとしたため、『拒否』行動が生じ、同時に不信感や嫌だという感情が生まれます。

このように認知症の方が暴力を振るうようになる理由は、日常の些細なことであり、介護する娘さんにとっては何度も言われたり行われることだったりします。それは、介護者の方にとっては、気の滅入ることで、冷たくしたり怒鳴ることは良くないことであると頭ではわかっていても、正しく優しく接するということは容易なことではないと思います。

 

暴力を振るうようになる前にできること


では、認知症の方が暴力を振るうようになる前にできることは何でしょうか。一呼吸おき、認知症を正しく理解した上で、ちょっと相手の気持ちに寄り添ってみませんか?自分におき替えてみて、嫌だなと感じることは認知症の方も同じように感じています。

また認知症の方は全てを忘れてしまうと思われがちですが、そんなことはありません。起こったことを忘れてしまっても、その時の感情は残っています。安心感を与えるような行動やことばをかけることによって、ご本人も落ち着き、結果として介助量軽減につながる場合があります。

 

相手の意思を尊重する

相手のやろうとしていることを頭ごなしに否定すると、より不安や苛立ちを助長させてしまいます。逆に過剰に心配し、「だいじょうぶ?」「できる?」と子共扱いするようなことがあれば自尊心を傷つけます。
相手の話を聞いてあげて、安心感を与えるようにしましょう。

 

暴力に対抗しない、事前に危険を回避する

どうしても回避できない場合を除いて、相手が暴力を振るってきたからといって力で押さえつけたることは避けましょう。余計に興奮させてしまうこともあるため、一旦その場を離れたり、事前に刃物などの危険なものは遠ざけておくことをオススメします。

 

注意をそらす工夫をする

興奮したり、いらだちが目に見えてわかったときは「散歩にでかけませんか?」など他のことに注意を向けるとおさまることがあります。趣味を事前につくっておき、いらだってきたら編み物などの趣味を促してみることも有効です。

 

暴力を振るうようになってしまった場合の対処法

物理的・心理的距離をとる

家族に暴力を振るわれたとなるとショックが大きいですよね。認知症が原因とわかっていても、消化できない気持ちが多々あるでしょう。

もし状況が許すのなら、任せられる他の家族や介護福祉施設を頼ることも選択肢にいれてみてはいかがでしょうか?介護サービスを利用することは決して悪いことではありません。サービスを上手く利用して、介護しているご自分の時間やお気持ちも大切にしてください

 

ケアマネージャーや医師に相談する

家族だけで背負い込まずに、ケアマネージャーや医師に相談すると解決の糸口が見えたり、アドバイスをもらえることもあります。人に話すことによって気持ちが少し楽になることもありますので、つらいと思ったら早めに周囲に相談することが大事です。

 

まとめ

認知症の方は、何もなく急に暴力を振るうことはありません。暴力を振るうようになってしまった理由を考え、表情や声かけを少し変えるだけでも相手に安心感を与えることができます。

介護する方自身の気持ちや時間も大切にしながら、一呼吸おいて穏やかに認知症の方と向き合ってみてください。認知症ご本人・介護者の方それぞれの心のケアを意識することで暴力が軽減することもあります。

 

髙橋 慶香(たかはし ちか)

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おじいちゃんおばあちゃんが大好きな作業療法士×福祉ネイリスト。その他、医療福祉系を中心としたWEBライターとしても活動中。モットーは「心が動けば体も動く」。

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