介護者に必要なレスパイトケアとは
日本の高齢化率は令和元年に28.4%となり、今後も75歳以上の人口は増加していくと見込まれています。
それに伴い、医療や介護現場の人手不足となることも踏まえて、厚生労働省は、2025年を目途に可能な限り住み慣れた地域でその人らしい暮らしを最期まで続けることができるような「地域包括ケアシステム」という体制構築を推進しているのです。
介護が必要な方が在宅で暮らしていくということは、その方を支える家族の存在が必要不可欠となります。核家族化や老々介護が増えている現代において、介護する側のケアという視点も重要となってきています。
今回は、そんな介護する側に対しての「レスパイトケア」について、実例を踏まえながらご紹介していきます。
レスパイトケアとは
レスパイトケアとは、介護をする側のご家族が一時的に介護から離れて休息やリフレッシュをするための介護者に対してのケアのことを言います。
住み慣れた家や地域で最期まで暮らしたいと願う方や、その想いを傍で支えたいと思う介護者は多いのではないでしょうか。
しかしながら、介護は決して楽なものではなく、終わりの見えない長い付き合いともなります。近年在宅での介護や看取りが進められている中で、介護者が体を痛めたり介護うつに陥るケースも増えてきているのが実状です。
在宅介護を家族や限られた方だけが抱え込むのではなく、介護している方自身のことも大切にすることが介護を無理なく続けるためのコツでもあります。だからこそ、介護者側のケアであるレスパイトケアが重要視され、様々なサービスが生まれてきているのです。
レスパイトケアが必要な理由
一時的に介護から離れ、介護者自身が体と心をリフレッシュするということは、介護者だけを救うのではなく、介護を受けている方自身をも守り、介護環境にも良い影響をもたらします。
介護を誰かに任せたり、逃げ出すことに罪悪感を持ってしまう介護者も多いですが、専門職やサービスに頼ることは決して悪いことではありません。
レスパイトケアが必要な理由を解説していきます。
介護者の負担を軽減する
レスパイトケアの一番の目的は、介護者の負担を軽減することです。在宅介護が増えていますが、家族が付きっきりで介護をするには精神的にも身体的にもあまりにも大きな負担がのしかかります。
介護をする家族にも生活があり、仕事や子育て、自分自身の事をする時間も必要です。
そこで、医療や介護の専門職が実施する介護保険サービスなどを上手に利用することで、時には介護から離れ、自分を大切にするのです。
そうすることによって、ゆとりを持った気持ちでまた介護に向き合うことができ、それが介護を受ける側のご家族との良好な関係を維持することにも繋がっていきます。
介護における頼れる味方を増やす
また、レスパイトケアを受けるということは、介護に関わる人たちが増えるということでもあります。
何か困った時に相談したり、介護を受けている方に対して専門的なケアを受けることもできます。介護を無理なく続けていくためには、気軽に介護について話せる良き理解者がいるということが大切です。
レスパイトケアを通して、専門職のケアやアドバイスをもらうことでそのご家族にとってより良い介護環境を整えていけるというメリットも含まれています。
介護保険を利用して受けられるレスパイトケア
では実際に受けられるレスパイトケアにはどのようなものがあるのでしょうか。
介護保険を利用して受けることのできるサービスをご紹介していきます。
こちらのサービスでは、どれも医療や介護の専門職が対応してくれるため、安心して利用することができますし、費用面においても保険適応となるため実際に利用している方は多くいらっしゃいます。
下記のサービスをご利用したい場合は、介護保険を申請し担当ケアマネージャーに相談すると、希望に沿った施設を紹介してくれますのでご検討ください。
ショートステイ
ショートステイは、介護施設に1泊から最大30日間連続で利用することができるサービスです。食事・入浴・介護のサービスが受けられ、施設によってはリハビリなどの機能訓練を受けられるところもあります。
そのため、介護者の旅行や長期のリフレッシュ、冠婚葬祭の時に利用するだけでなく、介護を受けているご本人の身体機能の維持・向上を目的として利用することもできるのです。
デイサービス
デイサービスは通所介護とも呼ばれ、日中の決まった時間だけ施設に通い食事や入浴、レクリエーション活動などを行うサービスです。
要介護度や介護を受ける側の状態、介護者の希望に合わせて、週何回利用するかをケアマネージャーと相談し、利用します。
多くの施設が自宅まで送迎をしてくれるため、日中の活動時間を確保できるというのは介護を受ける方・介護者の双方にとって有難いサービスではないでしょうか。
デイケア
通所リハビリテーションとも呼ばれるデイケアでは、デイサービス同様日中の決まった時間に施設を利用し、食事や入浴だけではなく機能訓練等のリハビリを受ける事ができます。
理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などのリハビリ専門職もいるため、介助方法や住宅改修・福祉用具の相談等も行えます。
訪問介護
訪問介護では、ホームヘルパーが自宅に来て、入浴や排泄、食事などの「身体介助」や掃除や調理、洗濯などの「生活援助」を行ってくれるサービスです。
デイサービスやデイケアに対して、受けられるサービスの時間は短いですが、在宅生活の直接的な支援を受けることができます。
ただ、訪問介護は原則利用者本人だけが対象となるため、介護者やその他の家族に対しての支援は行うことができません。
自費で受けられるレスパイトケア
介護保険を利用して活用できるサービスの他にも、最近は様々なサービスがレスパイトケアとして活用することができます。
その中でも特にオススメなものを一部ご紹介していきます。
家事代行
訪問介護でも家事を行ってくれるサービスがありますが、自費での家事代行サービスは介護を受けている方だけに留まらず、時間や内容もより柔軟に依頼することができる場合が多いです。
介護者にとって、毎日の家事も負担が大きいですし、介護となると洗濯や食事などやるべきことも増えますよね。
たまには手抜き・息抜きができるよう家事代行サービスを使うこともオススメです。
配食サービス
1日3食栄養バランスを考えて作るのは、根気のいることですし、仕事や用事があって食事を作ることが難しいという場合もあるかと思います。
最近では、高齢者向けや介護食を宅配してくれるサービスも様々な企業で行っているため、お昼や仕事で遅くなる時などには上手く活用すると、介護の負担を少し減らすことができます。
配食サービスでは、安否確認の意味合いを含めることもできるので、日中の様子が心配な方などにもぜひ利用してもらいたいサービスの一つです。
福祉ネイル
一般社団法人日本保健福祉ネイリスト協会で行っている福祉ネイルは、全国各地にいる福祉ネイリストたちがご自宅や施設に訪問して、ネイルケアを行うサービスです。
高齢者や障がいがある方に対しての施術について学んできたネイリストとして、爪を整えたり、ハンドトリートメントやマニュキュアを使用したネイルカラー・アートなどご希望のメニューを実施いたします。
介護を受けている方が喜んでくれるだけでなく、ネイルを行っている間に介護者の心休まる時間を提供したり、身近な相談相手としてもお話できることを大切に訪問しています。
福祉ネイルに関しては、こちらの記事もご覧ください。
サービスを上手く活用して、自分も大切にできる介護を
介護という存在が身近になってきた今、介護者の方も介護のあるべき姿を一度考えてみることも必要かもしれません。
レスパイトケアの必要性が叫ばれ、様々なサービスも増えてきています。
そんなサービスを上手に活用しながら、介護者の方自身も自分を大切にできる介護をしていくことが、結果として介護におけるより良い家族関係を作っていくのではないでしょうか。
ぜひ、一人で抱え込まずサービスや周りの方に頼ってくださいね。