顧問就任のご報告(公立黒川病院 角田浩)

顧問就任のご報告

2023年より当協会の顧問として、また協会主催の研究集会の演題にも多数関わっていただいております、公立黒川病院管理者の角田浩先生が、今年度も継続して就任いただきましたことをご報告させていただきます。
昨年は協会の抄録に『指先のパッチアダムス』という表現で胸が熱くなる応援文をいただきました。
今年は研究集会がございませんので、以下のように協会の皆様に向けて想いのこもった素晴らしい文章をいただきました。ここにみなさまと共有させていただきたいと存じます。

『魔法の羽を高くあげてダンボのように飛べ』

すでに第二次世界大戦が始まっていた1941年10月23日、アメリカでディズニーのアニメーション、「ダンボ」が公開された。

ダンボは、サーカスに生まれた子象である。耳が大きいだけで化け物扱いされ、生まれた直後から母親から引き離されるという境涯であった。ひょんなことからその大きい耳で空を飛べることに気づいたネズミのティモシーはダンボに高いところから飛ぶことを画策するが、見ていた周りのカラスにも笑われてしまう。ティモシーはそのカラスたちにダンボの哀れな身の上を激白してカラスたちの心を動かし、カラスたちは一転してダンボを助けようと考え直し、ダンボに「空を飛べるようになれる魔法の羽(と説明した普通の羽)」を授ける。

空を飛ぶのは大きな耳を持つダンボの力である。しかし、ただの羽を「空を飛べるようになれる魔法の羽」だと信じたダンボは羽を鼻先で握りしめ、崖から飛び降り、そのまま空を飛ぶのであった。

サーカスの本番でダンボは握りしめていたその羽を飛ばしてしまうが、「あれはただの羽なんだ、君は羽がなくても飛べるんだ」というティモシーの言葉でダンボは羽がなくても見事、観客の上を飛んだ。このアニメーションの感動のハイライトである。

人を喜ばせることができるのはその人の持つ本来の力であろう。そういうと「私はもう寝たきりで人の世話になっても人のためになることはできない」という人がいるかもしれない。そんなことはないのである。

「雑法藏経」というお経に、仮に何も持っていなくても周りに貢献できる「無財の七施」というものが書かれている。その七施の筆頭が「和顔施」である。いつも和やかに、おだやかな顔つきをもって人に対することである。

ここに爪の1㎠×10本のアートがある。その指を上にかざして喜ぶとき、それは和顔施である。もし喜びの言葉を発することができれば、七施の2番目、和語施である。

赤ちゃんが笑うとき、それを見て笑わない人はおるまい。一人の笑顔は周りの笑顔を作る。幸せの連鎖となる。

和顔施はその人の持つ本来の力であろう。しかし例えば入院生活や入所生活などでは奥深くしまわれて方もいるかもしれない。それならそれを外に引き出そう。

1㎠×10本のアートで。
そう、ダンボに飛ぶ力を与えた、
「空を飛べるようになれる魔法の羽」
のように。

公立黒川病院 角田浩

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