フレイルとは?高齢者のフレイル予防とオススメの活動5選!
日本は2007年に高齢化率が21%を超え、超高齢社会を迎えました。2020年には65歳以上の高齢者の占める割合が28.7%となり、平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳となっています。しかし、健康寿命(2016年)は男性が72.14歳、女性は74.79歳と、人生の後半は多くの人が介護が必要な状態に陥ることがわかってきているのです。
近年、サルコペニアやロコモティブシンドロームなどといった言葉をよく耳にするようになり、高齢者の健康や加齢による状態変化が注目されています。そんな中、2014年日本老年医学会がフレイルという概念を提唱しました。
今回の記事では、フレイルとは何か、予防や改善に必要なことをご紹介していきます。こちらの記事を参考に、ご本人ご家族が元気に歳を重ねていけるよう生活にできることを取り入れてみてください。
フレイルとは
フレイルとは、「Frailty」の日本語訳で虚弱を意味し、健康な状態から要介護状態になるまでの中間的な段階を指します。平均寿命が伸び、核家族や老々介護、孤独死などが増えている現代、潜在的にフレイルに陥っている人は少なくありませんし、今後どんどん増えていくことが予測できます。フレイルの特徴や評価基準、予後などをしっかりと理解した上で、予防や対策をとっていくことが大切なのです。
フレイルの3つの要素
サルコペニアは加齢によって筋肉量が減少すること。
ロコモティブシンドロームは、骨や関節、筋肉、神経などの運動器の障がいにより、移動機能が低下している状態を指します。
フレイルは、サルコペニアやロコモティブシンドロームより広い概念で、身体的・精神的・社会的といった3つの要素を含んでいます。
身体的要素
食べることに関する低栄養や口腔機能低下、筋力体力低下により動きにくい・疲れやすいなどといった運動器障がいが引き起こすものです。サルコペニアやロコモティブシンドロームといった概念はフレイルの身体的要素に含まれます。
精神的要素
抑うつや認知症といった高齢者になるとなりやすい状態でもある精神的な要因です。
社会的要素
孤独や閉じこもり、社会的な困窮などの社会的な要因を指します。
これらの3つの要素が重なり合うことにより、高齢者特有の悪循環が生じ、徐々に要介護状態へと生活機能が低下していくと言われています。
フレイルの評価基準
フレイルの状態と判断する評価基準にはさまざまなものがありますが、下記にはFriedが提唱した基準をご紹介します。
- 体重減少:6か月間で2~3㎏以上の(意図しない)体重減少があった
- 疲れやすい:わけもなく疲れたような感じがする
- 歩行速度の低下:1m/秒未満の場合
- 握力の低下:利き手の測定で男性26㎏未満、女性18㎏未満の場合
- 身体活動量の低下:軽い運動・体操・農作業等をしていない
これらの項目のうち3つ以上該当する場合はフレイル、1~2項目該当する場合はプレフレイル、全く該当しない場合は健常となります。
フレイルの予後
フレイルの状態になりそのまま放っておくと、極端に言えば死亡率が上昇します。
筋力体力が減り、転びやすくなったり、怪我や病気のリスクが上がると共に、ちょっとした風邪をひいた場合でも治りが遅くなったり、肺炎を引き起こしやすくなります。高齢者でフレイルの状態で入院した場合には、寝たきりや要介護状態になる可能性が高くなるのです。
しかし、フレイルの特徴として覚えておきたいことは、その状態から回復・改善できるということです。早めに適切な対策をとることで、要介護状態に移行する確率を減らすことができます。
フレイル予防に大切な4つのポイント
フレイルを予防し、元気に歳を重ねていくためにはどのようなことをする必要があるのでしょうか。大切な4つのポイントをご説明していきます。
栄養バランスの良い食事を摂ろう
フレイルを予防する上で、栄養バランスの良い食事を摂ることはとても大切です。
特に筋肉の基となる肉や魚、卵、大豆製品、乳製品などを積極的に摂るようにしましょう。これは、フレイル予防だけではなく、歳を重ねていくとなりやすい脳卒中や心臓疾患、生活習慣病の予防にも繋がります。
そして食事と合わせて大切なことは、口腔内の健康を保つということです。加齢により、硬いものが噛めなくなる、上手く飲み込めなくなるなどの咀嚼・嚥下機能の以下は、誤嚥性肺炎や食欲低下へと繋がっていきます。
定期的な口腔ケアの実施や歯科の受診、飲み込みにくさを感じたら専門医を受診し、適切なリハビリを受けることもできます。
適度な運動をしよう
フレイル予防だけではなく、サルコペニアやロコモティブシンドロームにならないためにも、日常に適度な運動を取り入れることは重要です。日頃から運動をしていない高齢者は怪我や病気になると、回復に時間がかかる傾向があります。そのため、怪我や病気を予防するための基礎的な筋力体力をつけておくことは必要です。
自宅でできる簡単なストレッチや筋力トレーニング、グランドゴルフ、日頃の買い物を歩いて行くなど、無理のない範囲から楽しく続けられるものを取り入れましょう。
社会との繋がりをもとう
フレイル予防に欠かせない大事なポイントは、社会と繋がりをもつということです。高齢者は若い時に比べ、関わる社会・人が減り、老々介護や孤食なども社会的な問題となっています。社会との繋がりが減ることで、
- 活気が減りうつ傾向になる
- 活動量が減り、筋力体力が低下する
- 活動量・活気が減ると食欲もなくなる
- 会話や食事量が減ることで咀嚼・嚥下機能が低下する
という悪循環を招くことになります。
- 誰か気軽に話せる友人をつくる
- 外出する予定をつくる
- 自分の役割をつくる
人は誰でも繋がりや役割があると、活気が生まれ、元気でいようとします。身近な所から社会との繋がりをつくってみてください。
早期発見・早期支援
そしてフレイル予防とは、早期発見・早期支援という考え方がとても大事になってきます。フレイルの状態に陥ったとしても、早い時期に適切な対応をとることで、状態の悪化を防いだり、健康な状態に戻ることのできるフレイルは、ご本人だけでは気がつきにくいこともあります。ご家族や周囲にいる人たちが変化に気づき、手を差し伸べてあげることが大切なのです。
フレイル予防・改善にオススメな活動5選!
フレイル予防や改善にオススメな具体的な活動をご紹介していきます。こちらを参考に、ご本人やご家族に合った活動を日常に取り入れてみてください。
趣味活動
なんでも良いので趣味をもつことは大切です。手芸や料理、散歩や映画鑑賞、グランドゴルフなど。できればその趣味を誰かと共有したり、作ったものをあげたり、散歩や外出も誰かと一緒に行うことで、会話が生まれたり、日常に張り合いが生まれます。元々ある趣味でも、新しく挑戦するものでも良いので、自分の好きな物に取り組む時間を作りましょう。
地域活動
最近では地域活動には様々なものがあります。老人クラブやサロンとも呼ばれるもので、同世代の人が集まり、話をしたり、体操をしたり、ゆっくりお茶を飲んだり。地域活動に参加することでコミュニティが生まれます。人や社会との繋がりができることで、外出するきっかけができるのです。その外出が日常の中での運動や食べることにも繋がってくるでしょう。
また、地域の中でコミュニティができるということは、フレイルの早期発見・早期支援にも繋がるきっかけつくりにもなります。自分は一人ではないと感じられることが大切なのです。
地域の美化活動や子どもの見守り隊などのボランティア活動に参加することも有効だと言えます。
健康教室
健康教室に参加するということはサルコペニアやロコモティブシンドローム、フレイルの予防に直接繋がってきます。健康教室自体の目的が筋力体力の維持であったり、認知症予防だったりします。そのため、場所によっては定期的な能力検査を行うところもあるため、自分の身体的・認知的状態を把握できるきっかけにもなり、健康を意識できる良い機会でもあります。
料理教室
料理教室に参加するということもオススメです。最近では高齢者向けや男性向けの料理教室もあり、簡単に栄養が摂れるメニューの提案や、作り方の工夫を教えてもらえます。
食事は誰かと一緒に食べるからこそ美味しいというのはあると思います。作ったものを誰かに食べてもらうでも良いですし、料理教室までいかなくとも、自宅で誰かと一緒に料理をして、一緒に会話をしながら食事をするということが大切なのです。
高齢になっても食事が楽しめるということはフレイル予防にとても重要です。
お洒落やリラクゼーション
歳を重ねても、身なりを整えて、キレイにお化粧をしたりお洒落をするということはとても重要です。それが外出するきっかけになったり、人と会話を楽しむことにも繋がってきます。精神的にリラックスできるアロマやマッサージなども気分を変えるために効果的です。
最近では、高齢者向けのネイルやトリートメントを行う福祉ネイルという活動も全国で広まっています。福祉ネイルを行う日本保健福祉ネイリスト協会では、今後認知症予防やフレイル予防といったことにも注目し、取り組みが進められます。
福祉ネイルに関してはこちら:一般社団法人福祉ネイリスト協会ホームページ
元気に歳を重ねるために
いかがでしたでしょうか。フレイルという状態は、歳を重ねていくと誰しもが陥る可能性のあるものです。自分が、もしくは大切なご家族が元気に歳を重ねていくために、この機会にぜひ生活を見つめ直してみてください。