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認知症の治療には薬物療法と非薬物療法がある!環境設定もとても大切!

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認知症に対しては一部の特殊な病状である場合を除き、元の状態に戻るための治療法は未だ見つかっていません。しかし、認知症を早期に発見し、適切な治療や対応を行うことで、できる限り認知症の方がご本人らしく穏やかに生活が送れるよう進行を遅らせることができます。近年よく言われるようになったMCI(軽度認知障害)の場合には、早期発見・早期治療を行うことで、健常者への回復が認められるとも言われています。

認知症の治療には、大きく分けて薬物療法非薬物療法があります。そして今回は、治療と合わせて重要な環境設定も踏まえて詳しくご紹介してきたいと思います。

 

1.薬物療法について

1.1中核症状に対しての薬物療法

記憶障害や見当識障害、実行機能障害などの中核症状と言われる認知症の根源となる症状に対して用いられる薬は現在4種類あります。商品名としてよく聞かれるものは、アリセプト、レミニール、リバスタッチ、メマリーです。これらは、認知症を引き起こす原因となった神経伝達物質に作用し、認知機能の改善や機能低下予防の効果が期待されています。

これら4種類の薬は、錠剤や粉、内服液や貼り薬など、それぞれタイプが異なり、その他の健康状態などによっても使用する薬を選ぶ必要があります。副作用も含め、その方に合った飲み方、合った薬を正しい用量服用することが大切です。認知症の方は、現在の自分の状態を正しく認識することが難しく、服薬を拒んだり、勝手に中止してしまう方もいらっしゃいますので、薬物療法を継続していくためには、認知症ご本人にとって抵抗感の少ない薬を主治医と決めていくのがよいでしょう。

 

1.2周辺症状に対しての薬物療法

徘徊や暴言・暴力、昼夜逆転、抑うつなどのBPSDと呼ばれる周辺症状に対する薬物療法もあります。

 

1.2.1抗精神病薬

認知症による幻覚・妄想や不安で常に落ち着きがなくなったり、興奮状態になりやすく暴言・暴力を振るうなどの場合には、リスペリドン、オランザピンなどといった抗精神病薬が使われることがあります。

 

1.2.2睡眠薬

昼夜逆転や夜間に周辺症状が現れるなどといった場合、昼夜のリズムを整えるためにマイスリー、ルネスタ、ロゼレムといった睡眠薬を処方されることもあります。だたし、高齢者や認知症の方が睡眠薬を使用する場合には、ふらつきや転倒のリスクもあるため、作用時間が短いものや筋弛緩作用が少ないものを選ぶとよいとされています。

 

1.2.3抗うつ薬

うつ傾向で何もやる気が起きないといった症状が顕著な場合にはSSRI、SNRIといった抗うつ薬を用いる場合があります。抗うつ薬では認知症の症状で何度も同じこと繰り返してしまう常同行動にも効果があるとされています。

 

1.2.4抗不安薬

不安で落ち着きがない、憂鬱な気分続いている場合は、ベンゾジアゼピン系抗不安薬を使用します。

 

1-2-5.漢方薬

イライラして暴言暴力を振るうようになった、幻覚・妄想がみられる、落ち着きがないなどといった周辺症状に対しては、近年抑肝散などの漢方薬が使われることも多いです。必要ではない部分にまで作用してしまう他の薬に比べて、漢方では日常生活の能力を落とさずに周辺症状に作用してくれるといった特徴があります。しかし、漢方薬は空腹時に服用するものが多いので、飲み方に注意が必要です。

 

これら周辺症状に対しての薬物療法に関しては、必須ではありません。積極的に使用するのではなく、まずは生活リズムを整えたり、運動や作業などの非薬物療法での改善を目指し、それでも難しい場合には、少量からの服用を開始する形になります。そして、服薬した後のご本人の状況をしっかりと見極めて、主治医の先生と薬の量を正しく調節していくことがとても大切です。落ち着きがなく、興奮状態が続いているからと抗精神病薬を多く服用しすぎてしまうと、反対にぼんやりとしてしまい、会話が成り立たなくなったり、ふらつきが出て転倒のリスクが高くなる場合もあるので、主治医との連携をしっかりと図っていきましょう。

 

2.非薬物療法について

非薬物療法に関しても、薬物療法同様、認知症の根本的な治療としての効果は認められていません。しかし、その方に合った非薬物療法を実施することで、認知症を患いながらも、その人らしく、できる限り穏やかに日常が送れることが期待されます。そこで、代表的な非薬物療法を5つご紹介いたします。

 

 2.1リハビリテーション

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士がそれぞれ多方面から脳の機能維持やADL(日常生活動作)・QOL(生活の質)維持向上を図っていきます。例えば、計算やパズルなどの思考を働かせる脳トレや馴染みの作業・趣味を通しての実行機能訓練や役割の確保。その人に合った作業を提供することで、脳の活性化と共に、不安や焦燥感にとらわれることなく穏やかな時間を過ごせるように促していきます。最近では、運動をして体を動かすことが認知症予防につながるとの報告もあり、運動療法も積極的に取り組まれています。

 

 2.2回想法

認知症の方は、最近の記憶よりも昔の記憶の方が比較的保たれていることが多くあります。そのため、回想法では、昔の出来事を振り返ることで、記憶の掘り起こしであったり、今を再確認するきっかけを作ったり、人と懐かしい話をすることで心を穏やかにさせる効果があるとされています。

 

 2.3音楽療法

音楽療法では、馴染みの音楽を聴くことで、脳の活性化や心を落ち着かせる効果があります。思い出の曲を聴くと同時にその時の記憶が蘇ったり、歌を歌うことで他者とのコミュニケーションや発声・摂食機能の維持向上にもつながります。また、季節の曲を聴くことで、見当識障害がある方にも、無意識的に季節を感じてもらえるきっかけにもなるでしょう。

 

 2.4園芸療法

園芸療法は、実施する設定によって様々な効果が期待できます。それぞれ季節ごとにできる花や野菜が異なるため、それを植え育てる過程を体感することで、季節を感じることができ、見当識訓練になります。また、外の空気を吸い、土を触ることで心が穏やかになること、昔を思い出す回想法的な効果も期待することができます。実際に体を動かし、野菜の収穫などを行うことにより、良い疲労感の獲得や食欲増進にもつながり、生活リズムを整える手助けをすることもできるのです。

 

2.5動物療法(アニマルセラピー)

動物と触れ合うことによって、精神面へのプラスの効果が期待されています。心が穏やかになったり、何もやる気がおきずに抑うつ状態だった方が、動物に触れ合うことで表情が明るくなり、自ら動く姿勢がみられたり。幸せホルモンと言われているセロトニンが分泌され、脳の活性化につながるとされています。

 

3.環境設定について

認知症の方が生活していく上で、環境設定も大切なポイントの一つです。軽度認知症の方が、しばらく病院に入院したことで認知症がかなり進行してしまったというのはよく聞くお話です。認知症の方にとっては、環境が変わることで混乱することや不安・不穏を助長させてしまいます。転倒や誤飲の危険性を取り除きながらも、ご本人が安心できる馴染みの環境を保ってあげることが重要です。また、外からの適度な刺激や季節・時間を感じられること、なくしやすい・忘れやすいものは見えやすいような表示をしておくなどの工夫も必要となってきます。認知症が重度化してしまうと、ちょっとした変化でも環境を変えるのを激しく拒んだり、介護者に不信感を募らせてしまうきっかけにもなるので、認知症を発症した初期の段階から先を見越しての環境設定を行っていくことがオススメです。

 

4.まとめ

いかがでしたでしょうか?

認知症は特殊な病状である場合を除き、元の状態に戻ることは難しい病気ではありますが、できる治療はたくさんあります。薬物療法や非薬物療法を上手く活用することで、認知症を患いながらも、問題行動とされる困りごとがほとんどなく、ご本人もご家族も穏やかに過ごしている方もいらっしゃいます。大事なことは早期からご本人の状態をしっかりと見極め、医師や専門職と密に連携を図っていくことです。また、認知症の治療という視点では、専門家が実施することが多いですが、ご家族やご本人の周りにいる方々ができることはたくさんあります。一人で抱え込まず、専門家と一緒に認知症と上手く付き合っていく方法を探っていってください。

 

髙橋 慶香(たかはし ちか)

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おじいちゃんおばあちゃんが大好きな作業療法士×福祉ネイリスト。その他、医療福祉系を中心としたWEBライターとしても活動中。モットーは「心が動けば体も動く」。

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