認知症ケアの目標とは?具体的な介護・支援策の種類と一緒に学ぼう!
基本的に一度発症すると回復・治癒することはないとされる認知症ですが、認知症の方の生活を支える家族や介護者は、どんなことを目標に介助やケアを続けていけば良いのでしょうか。
そこで今回は、認知症の方をケアする際に目標とすべきことについて、認知症ケアの基本的な考え方や方法の具体例と一緒に解説していきます。認知症の方との接し方や、ケアを続けていく中で達成を目指すべき目標がわからずに悩んでいるという方は、ぜひ参考にご覧ください。
目次
認知症ケアとは?基本的な考え方
まずは認知症という病気の概要、認知症ケアの基本的な考え方について説明していきます。
認知症とは?どんな病気?
さまざまな原因から脳機能が低下していった結果、認知機能が低下して日常生活や社会生活に支障をきたすようになる病気のことを認知症と言います。具体的な症状としては、記憶障害や見当識障害、思考力・判断力の低下などの「中核症状」の他、ご本人の性格や生活環境、身体状況などが原因で起こる「行動・心理症状」「周辺症状(BPSD)」が挙げられるでしょう。
認知症になると、中核症状によって自身が置かれている状況や場所が理解できなくなったり、過去と現在をつなげて認識し、未来を予測するといったことが難しくなっていきます。また、言語機能やコミュニケーション能力の低下により、自分が感じていることを言葉にできなくなったり、感情や興奮をうまくコントロールできなくなることも珍しくありません。
そのため認知症の方の多くは、慢性的に強い不安やストレスを抱えており、その精神的な苦痛や不調が周辺症状を引き起こし、さらに悪化させていくと考えられているのです。
認知症ケアの目標は「本人・家族・介護者の負担軽減」
認知症ケアとは、認知症を発症した方の個性や尊厳、意思を尊重しながら、その方が最期までご本人らしく暮らしていけるように支えるという考え方のもと、各種のケアを提供すること。
そして認知症ケアの目標とは、認知症を患うご本人をはじめ、その周囲で生活支援を行う家族や介護者にかかる精神的・身体的負担を軽減することにあります。もう少しわかりやすく言うと、三者それぞれの負担を以下のように軽減していくことと言えるでしょう。
- 認知症の方:中核症状による不安やストレスを軽減するとともに、周辺症状も緩和する
- ご家族の方:暴力、暴言、徘徊等の周辺症状への対応や介護にかかる精神的・身体的な負担の軽減
- 介護者の方:周辺症状の緩和、また認知症の方と信頼関係を築くことによる介護負担の軽減、労働環境の改善
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認知症ケアにおいて目標とすべきこと5つ
認知症ケアを提供する上での目標とは、認知症に伴う本人の苦痛やストレス、そして認知症の方を支える家族や介護者にかかる負担を軽減することにあります。ここからは、認知症ケアの最終的な目標を達成するために、一つずつクリアしていくべき5つの目標について具体的に見ていきましょう。
認知症ケアの目標①残存機能の維持
認知症の方や高齢の方は、病気や加齢の影響で時間とともにできることが少なくなっていく傾向にあります。そのため認知症ケアでは、認知症の方が今できること・残っている能力を可能な限り維持すること、またそのために生活支援することが大きな目標の一つとされています。
例えば、少しでも歩ける方の場合は歩行機能を維持すること。また食事や身支度、家事などの日常生活のための動作が可能な方なら、それらに必要な筋力や思考力、判断力等をできるだけ長く維持することを目的に、見守りや身体的な介助等を続けることが目標となります。
ただし、認知症の方ができること・できないことを判断するのは、原則、周囲の家族や介護者ではありません。できるだけ認知症のある方ご本人の意思を尊重して、本人ができる・やりたいと言っていることが続けられるようにサポートしてあげましょう。
認知症ケアの目標②心身の回復・向上
「今できることをできる状態のまま維持すること」と並び、認知症ケアにおいて大きな目標の一つとなるのが心身の回復と向上、つまり「心身の状態を少しでも改善していくこと」です。
具体的な目標はご本人の残存機能に合わせて設定する必要がありますが、例えば以下のような目標設定をした上で、達成を目指して認知症ケアを提供していくようにすると良いでしょう。
- 興奮や落ち込むことが多い方の場合:穏やかに過ごす、会話できる機会や時間を増やす
- 自力で立つ、歩く機能が残っている方の場合:自立可能な時間や歩行距離を延ばす 等
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認知症ケアの目標③周辺症状の軽減
認知症による症状のうち不安や抑うつ、幻覚、徘徊、暴力暴言、睡眠障害などの周辺症状は、認知症ケアによって緩和できると考えられています。そのため、周辺症状の緩和も認知症ケアを続けていく中で達成を目指すべき重要な目標の一つだと言えるでしょう。
認知症ケアの目標④その方の意思や尊厳を守る
先述した通り、認知症ケアの基本は「ご本人の個性や尊厳、意思を尊重しながら生活全般を支えること」です。そのため、認知症の方に認知症ケアを提供する際には、その方の性格や個性に合わせて失礼のないように声掛けや介護の方法、接し方などを工夫しなければなりません。
認知症の方の意思を尊重し、尊厳を守ることは、認知症ケアの基本に則った大切な目標です。
家族や介護者は、日々の生活支援や業務の慌ただしさから忘れてしまいがちですが、認知症の方もご自身と同じく尊厳ある人間であることを、常に意識するようにしてください。
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認知症ケアの目標⑤介護者の負担を軽減する
認知症の方を介護するには多大な精神的・身体的負担がかかるため、ここまでに紹介してきた目標の達成だけを目指していると、周囲の家族や介護者が疲弊してしまうと考えられます。
先述した通り、認知症ケアは認知症を患う方のためだけに実施するものではありません。認知症という病気や症状を理解し、ご本人の個性や尊厳を尊重しながら介護サービスや各種のケアを提供することにより、結果的に介護する側の負担を軽減するためのものでもあるのです。
認知症ケアを提供する時は、認知症の方の家族や介護者を守るという目標を達成することも、忘れないようにしてくださいね。
目標達成に役立つ!認知症ケアの種類を紹介
認知症ケアにおける目標の達成に向けて、実践できることの種類・方法の具体例としては以下のようなものが挙げられるでしょう。認知症の方に介護サービスや認知症ケアを提供する際の参考として、ぜひご確認ください。
- 本人の体調や身体状況、認知機能、そしてペースに合わせた日常生活の見守り
- 顔色や皮膚の状態、排泄状況、食事や水分の摂取量などを観察したり、服薬状況を管理することを通した体調・健康管理のサポート
- 住宅改修や福祉用具のレンタル等を通して、本人が安心できる生活環境を整える
- ゆっくり、わかりやすく話す等、認知症の方に伝わる方法で「言語コミュニケーション」を取る
- 状況に応じ、スキンシップや目を合わせることなどで意思疎通や信頼の気持ちを伝える「非言語コミュニケーション」も行う
- 日頃の声掛けの仕方、介助中の接し方を工夫し、認知症の方の尊厳を傷つけないようにする
- 動植物のお世話や家事等、所属するコミュニティの中で何らかの役割を担ってもらう
- ご本人の興味や関心にあったレクリエーションやサービスを受ける機会を提供する 等
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認知症ケアは、目標を見失わずに続けていくことが大切!
認知症の方へのケアや介護は、長期間にわたって必要になることも少なくありません。大幅な症状の改善や病気の治癒が見込めない中で、その方の状態や認知機能に合わせた方針・目標を設定しておくことは、適切な認知症ケアを続けていく上での大きな助けとなるはずです。
認知症ケアは、認知症のある方はもちろん、周囲で支える家族・介護者の負担を軽減することを目標に行うべきものであることを、忘れないようにしましょう。
私たち一般社団法人 日本保健福祉ネイリスト協会では、2012年の活動開始以来、認知症のある方や高齢者、障がいのある方々に向けて「福祉ネイル」というサービスを提供してきました。
福祉ネイルとは、ご要望に応じて介護施設等やご自宅に伺い、その方のお身体の状態に合った施術を一般的なネイルよりも短時間で提供する美容サービスの一種です。認知症などの病気・加齢のために自己肯定感やご自身への関心が低下しやすい高齢の方にとって、美容サービスは非日常的な喜びや感動、また他者とコミュニケーションを取るための貴重な機会となります。
施術中は「見る」「話す」「触れる」「立つ」ことに重きを置いた接遇の他、回想法のエッセンスを取り入れたコミュニケーションを実施。さらに認知症の方に対しては、症状の進行抑制や周辺症状の緩和、またQOLの向上に寄与できるように、ご本人のペースを第一に考えて施術を行います。
当協会所属の福祉ネイリストは、育成カリキュラムにて認知症の種類や基本的な症状、接し方のコツを学んだ者ばかりです。認知症の方に向けて、レクリエーションやケアの一環として美容サービスを提供したいとお考えの方は、日本保健福祉ネイリスト協会までご相談ください。
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