高齢者介護におけるコミュニケーションの目標や重要性を解説!役立つスキルや話題選びのコツとは?

高齢者介護におけるコミュニケーションの目標や重要性を解説!役立つスキルや話題選びのコツとは?

高齢者向けの介護施設では、介護サービスの質と同じくらい利用者様ご本人や、そのご家族としっかりとコミュニケーションを取り、信頼関係を築いていくことが重要だとされています。

そこで今回は、介護におけるコミュニケーションの重要性や目指すべき達成目標について、会話や信頼関係の構築に役立つスキルや話題選びのコツと一緒に解説していきます。併せて、介護の際に避けるべきコミュニケーションの取り方等についても紹介していくので、利用者様やご家族とのコミュニケーションにお悩みの介護職員の方は、ぜひ最後までご確認ください。

介護におけるコミュニケーションの目標・重要性とは?

人間同士が信頼関係を築くには、さまざまな手段でコミュニケーションを取ること、お互いに意思疎通を図ることが欠かせません。これは、介護者と要介護者が密接に関わる介護現場においても同様であり、スムーズな介護サービスの提供には良好な人間関係の構築が不可欠です。

信頼できていない、よく知らない人から受ける介護は、要介護者に多大な苦痛や不快を与える場合があります。また信頼関係ができていないために要介護者からの協力を得られず、介護時に拒否や抵抗をされると、介護者にかかる時間的・体力的な負担も増大してしまうでしょう。

つまり、高齢者介護の現場においてコミュニケーションの密度や質は、介護サービスそのものの質や要介護者のQOLをはじめ、介護者の労働環境をも大きく左右する要素だと言えます。

これこそが、介護現場においてコミュニケーションが重要視される理由であり、その最終目標は「利用者様・ご家族の信頼を得て、円滑に介護サービスを提供できる環境をつくること」にあると言えるでしょう。

介護時は言葉以外のコミュニケーションも大切

コミュニケーションには、大きく「言語コミュニケーション」と「非言語コミュニケーション」の2種類があります。言語コミュニケーションとは、会話や手紙、メール、筆談等、言葉を介するコミュニケーションのこと。対して非言語コミュニケーションとは、表情や身振り・手振りなど、言葉以外の手段を使って相手と意思疎通を図るコミュニケーション法のことです。

要介護者のADL(日常生活動作)はさまざまであり、高齢者の中には、発語をうまく行えない方もいらっしゃいます。介護時のコミュニケーションの質を高めるには、状況に応じて言語・非言語の手法をうまく組み合わせたり、使い分ける必要があると覚えておきましょう。

介護現場で役立つ!コミュニケーションスキル3選

介護現場で役立つ!コミュニケーションスキル3選

ここからは、介護施設に通所・入所する高齢者とコミュニケーションを取る際に役立つスキルを3つ紹介していきます。いずれも知っておいて損はないものばかりですので、もしまだ業務に取り入れていないものがあれば、活用してみると良いでしょう。

①基本の傾聴・共感・受容

介護のコミュニケーションでは、介護者ではなく要介護者を主体とすること、そして利用者様に心地よく話してもらえるような雰囲気・関係性を築いていくのが良いとされます。そこで意識したいのが、聞き上手になるための基本スキルである「傾聴」「共感」「受容」の3つです。

傾聴とは 相槌や表情等のリアクション、姿勢を通して「あなたの話をきちんと聞いていますよ」ということを伝えながら話を聞くこと。
共感とは 話を聞きながら当時の感覚や感情をリアルに想像すること、また相手と喜怒哀楽を共有しながら話を聞くこと。
受容とは 利用者様の話や行動を否定・批判するのではなく、一旦ありのままに受け入れて理解し、理由を推測した上で発言や行動をすること。

上記の一覧のスキルを習得・実践するだけでも、利用者様に「個人として尊重してくれている」「自分と向き合ってくれている」と感じていただけるようになるでしょう。

②ラポール法

フランス語で「橋を架ける」「信頼関係」「親密な関係」などの意味を持つラポール法とは、言葉や行動から相手に共感を示すことで、警戒心を和らげるコミュニケーションスキルです。

高齢者介護等の社会福祉の世界だけでなくビジネスの世界でも役立つスキルであり、以下の4つの技術を駆使して相手との意思疎通を図ります。

  • 自由に回答して話題を広げられる「開かれた質問」、はい・いいえで答えられる「閉じられた質問」の使い分け
  • まるで鏡に映したように、相手の姿勢や動作、表情をまねる「ミラーリング」
  • 声の大きさやトーン、話す速度等を相手に合わせて調整する「マッチング」
  • 相手の発した言葉をオウム返しすることで会話を進めていく「バックトラッキング」

利用者様との会話のキャッチボールがうまくいかない、期待していたような反応が来ないという場合は、ラポール法を使って協調性や共感性、尊重する気持ちを重ねて伝えてみましょう。

③回想法

回想法とは、会話を通じて高齢者の記憶を引き出し、寄り添いながら一緒に辿っていく心理療法の一種です。認知症の方のリハビリテーションとしても使われるコミュニケーションスキルであり、以下のような効果が期待できます。

  • 幸せだったこと、楽しかったことを思い出して笑顔になる
  • その方が生きてきた歴史、個性を思い出すことによるアイデンティティの回復
  • 過去の記憶と今の自分、そして未来がつながることによる精神的な安定
  • 自分のことを話す、コミュニケーションを深めるためのきっかけ作り

認知症や加齢による見当識障害、記憶障害がある利用者様には、回想法によるコミュニケーションを図ってみるのが良いかもしれません。

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介護でコミュニケーションを取る際の話題選びのコツ

介護に伴うコミュニケーションでは、話し方や表情、ジェスチャーだけでなく、話題選びにも注意が必要です。そこでここからは、大きく2つのシーン別に介護でコミュニケーションを取る際の話題選びのコツについて、紹介していきます。

複数人が集まる場では「共通の話題」がおすすめ

レクリエーション中や食事中など、たくさんの人が集まるシーンでは、特定の方だけに当てはまることや個人的な話題、また利用者様同士を比較するような話はするべきではありません。

天気や季節、気温、イベントや行事、その日の食事内容、周囲の環境の話等、その場に集まる全員に共通することを話題に選ぶようにしましょう。

入浴や排泄の介助中は身体・排泄の話題は避けて

対して入浴介助中や排泄介助中は、非常にプライベートな環境になります。そのため、利用者様の個人的な趣味などの個別の話題はOKですが、体形や体重をはじめ、手術痕といった身体的な特徴・事情に触れるようなこと、また排泄に関する話題は原則避けるようにしてください。

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介護時に避けるべきコミュニケーションの取り方

介護をする際の適切なコミュニケーションの取り方や、話題選びのコツと併せて知っておきたいのが「介護時に避けるべきコミュニケーションの取り方」です。一般的に、介護者から要介護者に対して以下のようなコミュニケーションを取るのは、不適切だと考えられています。

介護現場におけるコミュニケーションの目標を達成するためにも、絶対に忘れないようにしてくださいね。

  • ため口や幼児言葉を使った利用者様の尊厳や意思を無視、または軽視したような声掛け
  • 利用者様に指示や強要、命令、禁止、詰問、否定するような言い回しや言葉を使うこと

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【状況別】介護時の適切なコミュニケーション方法

【状況別】介護時の適切なコミュニケーション方法

ここまでに見てきたようなスキルや知識を使っても、利用者様の心身の状況によってはうまくコミュニケーションが取れないこともあります。そこで以下からは、利用者様と円滑にコミュニケーションを取るためのヒントを、状況別に5パターン紹介していきます。

利用者様によって、コミュニケーションの最適解は人それぞれです。以下に挙げるポイントを参考に、複数の方法で意思の疎通や信頼関係の構築を図ってみましょう。

言語障がいを抱える利用者様の場合

脳梗塞等の後遺症によって声が出しにくい、舌がもつれやすい、口が動かしにくい等の言語障害がある方の場合は、発言を急かしたり先回りしたりせず、まず待ってみることが大切です。

またご本人の目線や表情、ジェスチャーをよく観察して要望を予測できるようにしておくこと、そして好みや生活サイクルを把握しておく必要もあります。これにより、状況によっては閉じられた質問でサポートする等、コミュニケーションの方法を考案しやすくなるでしょう。

無口で会話が難しい利用者様の場合

利用者様の中には、もともとの性格や環境変化への戸惑い、ストレスから極端に無口になる方もいます。そのような利用者様には、まずは毎日笑顔で挨拶等の基本的な声掛けを続け、ゆっくりと根気よく距離を縮めていくのがおすすめです。

早く仲良くなろう、一気に距離を縮めようとすると怖がられたり、嫌がられる可能性もありますので、急がず、でも諦めずに一定の距離感・リズムでコミュニケーションを続けましょう。

一方的に話し続ける利用者様の場合

お話好きで、一方的にたくさん話をされる利用者様には、まずは傾聴の姿勢で根気よくお話を聞きます。その際、途中で話を遮ってしまうと気分を害されるケースが多いので、相槌を打ちながら話が途切れる瞬間を待って、相手に同意を得る形で切り上げると良いでしょう。

具体的な言い方の例としては、「そうなんですね!すみません、頼まれている仕事があるので、あっちに行ってきても良いですか?」などが挙げられます。

見当識障害がある利用者様の場合

認知症の代表的な症状であり、自分の状態、時間や場所、人の顔や名前がわからなくなる見当識障害がある方への対処法としては、絶対にご本人のおっしゃることを否定しないことです。

自分が認識していること、言っていることを頭からすべて否定されると、余計に混乱して不安になってしまう場合があります。お茶を入れたり、散歩にお誘いするなどして、その都度別のことに意識を向けるか、ご本人が安心できる環境を少しずつ整えていくのが良いでしょう。

怒っている・不機嫌な利用者様の場合

普段から怒りっぽい、不機嫌になりやすい傾向にある方とのコミュニケーションでは、まず閉じられた質問で様子を見るようにします。そして、介助やケアに強い抵抗や拒否感を示すようなら、時間帯や担当者を変えて対応してみましょう。

また、既に怒っている方に対しては、怒っている理由やご本人の言い分を聞いた上で共感の言葉をかけてみてください。それで落ち着くようなら、介助のご案内や、他の話題で気分を変えてみても良いかもしれません。

もしも、何度か声をかけても利用者様の興奮が収まらず、暴力的なふるまいがエスカレートするようなら、他の職員を応援に呼んだ上で見守りを続けて、感情が落ち着くのを待ちます。

介護をする時は利用者様の状況に合わせてコミュニケーションを取り、目標の達成を目指そう

介護をする時は利用者様の状況に合わせてコミュニケーションを取り、目標の達成を目指そう

福祉ネイルとは、ご要望に応じて介護施設等やご自宅に伺い、その方のお身体の状態に合った施術を一般的なネイルよりも短時間で提供するものです。施術中は利用者様が見やすいように、大きく担当者の名前を書いた名札とエプロンを着用。お互いに自己紹介をした上で積極的に利用者様のお名前をお呼びして、回想法も交えてコミュニケーションを取っていきます。

「施設での美容サービス提供に興味があるが、介護対応に不安がある」「レクリエーションの一環として、利用者様への美容サービスの提供を検討したい」等とお考えの際は、ぜひ当協会までお気軽にご相談ください。

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