認知症の方とのコミュニケーションが上手くいくコツ5選!症例別の対応方法も
認知症の方とコミュニケーションを取る際、どう対応すべきか悩む方は多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、まず認知症がどのような症状なのかを説明し、そのあとにコミュニケーションが上手くいくコツを5つ紹介します。
また、徘徊や被害妄想といった認知症特有の症状に合った対応方法も紹介しているので、接し方に悩む方はぜひ参考にして下さい。
目次
認知症はどんな症状?
認知症は、脳の病気や障害が原因で脳細胞が正常に働かなくなり、日常生活に支障をきたすようになった状態のこと。
高齢者の方に多く見られる症状で、65歳以上は5人に1人が認知症であると言われています。(参照:内閣府「高齢社会白書」)
記憶障害や見当識障害(時間や場所を把握する力が低下すること)、理解力・判断力の低下、抑うつ、被害妄想など、症状は認知症の進行度合いによって様々です。
一般的な物忘れとの違いは?
高齢でなくても「人の名前がパッとでてこない」「昨日の夕飯が思い出せない」といったことがありますよね。
これは脳の老化によるもので、認知症ではありません。体験したことの一部を忘れているだけなので、ヒントさえあればすぐに思い出せます。そして「忘れている」という自覚があるのが特徴です。
一方、認知症の場合は、体験したこと自体を忘れています。そのため、「忘れている」という自覚もありません。例えば、「昨晩のご飯を食べたこと自体が思い出せない」などが典型的な認知症の物忘れです。
会話のキャッチボールが上手くいかないのも認知症?
高齢者の方と接していると、「声が聞こえていない」「話を理解していない」と感じることがあるかもしれません。
しかし、これは加齢による聴力の低下が原因で、必ずしも認知症であるというわけではないのです。そのため、認知症の有無を問わず、高齢者の方とコミュニケーションを取るときは「ゆっくり・はっきり」と話すようにしましょう。
それでもなお、会話のキャッチボールが上手くいかないと感じる場合は、認知症の可能性も考えられるので、病院で検査することをおすすめします。
認知症の方と上手くコミュニケーションを取るコツ5つ
ここからは、認知症の方とのコミュニケーションが上手くいくコツを5つ紹介します。
短い言葉で簡潔に話す
認知症の方は、言葉への理解力が低下するため、同時に複数のことを言われると、その意味を理解するのに苦労します。
例えば、「今日も暑いですね。熱中症にならないようにこまめに水分を取らないとダメですよ。お茶を持ってくるので今から飲みましょうね。それとも水がいいですか?」と伝えたとしましょう。
すると、「暑い」「熱中症」「水分をとる」「お茶を飲む」「水を飲む」など、様々な情報が混在し、何を言われているのかを理解するまでに時間がかかったり、分からないまま不安を感じて過ごすことになるかもしれません。
そうならないためには、なるべく分かりやすい言葉で簡潔に伝えるよう意識しましょう。
また、認知症の方は失語により、言いたいことが言葉に出てこない場合もありす。そのため、何かを質問するときは「はい」か「いいえ」で答えられるよう、聞き方を工夫する必要もあるでしょう。
相手の表情をしっかり観察する
認知症の方と接する際、言葉でのコミュニケーションが難しい場合があります。そんな時は、相手の表情をよく観察してみてください。
いつもより口角が下がっている、眉間にシワを寄せている、雰囲気が柔らかいなど、小さな変化で十分です。そして「今どう感じているのか」を考えましょう。そうすれば、相手に寄り添った言葉をかけたり、より良い介助をすることができるようになります。
ただし、認知症が進むと表情が乏しくなることも多いため、日頃から相手の様子を観察していなければ表情の変化に気づくことさえ難しいかもしれません。そういった場合は、体の動きや声のトーンなども確認するようにしましょう。
相手の言動を受け入れる姿勢で接する
認知症になると記憶力や感情をコントロールする能力が低下し、何度も同じこと・間違ったことを言ったり、大声で怒鳴ったりすることがあります。これこそが「認知症の方とのコミュニケーションは難しい」と思ってしまう原因のひとつではないでしょうか。
しかし、自分の気持ちを上手く言葉にできないことに不安や苛立ちを感じ、ショックを受けているのは認知症の方本人です。そのため、話の内容が毎回同じだったり、間違っていても否定せず受け入れながら聞くようにしましょう。
また、たとえ暴言や理不尽なことを言われても、できるだけ相手の気持ちに寄り添う姿勢で接してください。そうすることで、「受け入れてもらえている」「味方でいてくれている」といった安心感が持て、お互いの良い信頼関係にも繋がります。
ただし、あまりにも興奮が強い場合は、そっと見守るか話題を変えるなどの配慮も必要です。
相手のペースに合わせる
認知症の方は、一方的に話し続けられたり、急かされたりすると、慌ててしまいパニックに陥ることがあります。
例えば、認知症の方の反応を無視したペースで「どこか痛むところはありますか?足ですか?腰ですか?それとも気持ち悪いですか?」など質問するのは、どの質問に答えればいいか分からなくなります。
また、「早くしてください」「まだ時間がかかりますか?」など、相手を急かすような言葉も言わないようにしてください。急かされることでストレスを感じたり、焦って怪我に繋がるかもしれません。
相手のペースに合わせて「待つ」「ゆったり構える」姿勢を持つことは、認知症の方が自分らしさを保ちながら、心穏やかに過ごせる手助けになるでしょう。
ジェスチャーを取り入れる
ここまでで紹介した「言葉は短く、相手のペースで話す」ということを実践しても上手く伝わらない時は、ジェスチャーを取り入れてみましょう。
例えば、「手を洗いましょう」と言っても困った顔をしていれば、洗面台で手を洗うジェスチャーをしてみるとすぐに理解してもらえます。
また、痛みの有無の確認として、お腹や頭をさすりながら顔をしかめる動作が通じることもあり、もし相手が同じジェスチャーを真似した場合は、痛みがあるサインかもしれません。
言葉という形のないものを覚えたり理解することが苦手な認知症の方にとって、視覚的に認識できるジェスチャーは是非とも取り入れたいコミュニケーション方法の一つだと言えるでしょう。
症例別コミュニケーションの取り方
ここまでで、認知症の方との上手なコミュニケーション方法が分かりました。それでは実際にどのように接すれば良いかを、具体例と共に確認しましょう。
症例1:徘徊する
外に出て行こうとしたり、落ち着きなく歩き回る「徘徊」は、記憶障害や見当識障害が引き起こすものであり、本人にもどうすることもできない衝動的な行動です。
そして、一見何の目的もないように見えますが、実は認知症の方なりに目的や理由があります。例えば、「なぜ自分がここにいるのか分からない」「自分の家(昔に住んでいた場所など)に帰らなければならない」といった理由で、外を出歩くようです。
そのため、無理に外出を止めたり、「家はもうないでしょ」など理屈を説明しても、なかなか理解してもらうことはできず、むしろ逆効果になることも考えられます。
徘徊しているのを見つけたら、そっと見守るか、「どうして家に帰りたいの?」「なぜ出かけたいの?」と本人の気持ちを聞いてあげましょう。明確な答えが返ってくるとは限りませんが、どんな回答であっても「そうなんですね」と共感することがポイントです。
そのあとは一緒に歩いたり、安心する言葉をかけたりしながら、認知症の方の気持ちが落ち着いたあとに「帰りましょうか」と声をかけてあげてください。
そうすれば、認知症の方の不安や怒りを掻き立てることなく落ち着いた状態で、元のいた場所に戻ってくれることでしょう。
症例2:被害妄想がある
認知症では、記憶障害や心理症状により被害妄想をしやすくなると言われています。実際には起きていないことなので「違うよ」と否定してしまいたくなりますが、それだと余計に疑念を強めてしまったり、怒らせてしまうかもしれません。
例えば、「誰かが財布を盗んだ」と言ってきたとしましょう。そこで普通は「誰も盗んでないよ、引出しにしまったんじゃないの?」と言ってしまいそうになりますよね。
しかし、認知症の方の話を否定してはいけません。こんな時は「それは困りましたね、一緒に探しましょう!」というように答えてください。
そして本当に一緒に探すのですが、ここで気をつけたいのが、認知症の方本人に財布を見つけてもらうよう誘導することです。もし一緒に探す人が見つけてしまうと、「あんたが盗んだんだろ?」と誤解される可能性もあり、信頼関係に悪影響を及ぼしかねません。
そうならないためにも、なるべく本人が見つけられるよう「こっちは探した?」など、誘導してあげるようにしましょう。
症例3:食事したことを忘れる
記憶障害によって、先ほどした食事のことを忘れる認知症の方は多くいます。ついさっき食べたばかりなのに、「ご飯はまだ?」と聞かれるとどう対応すればいいか悩みますよね。
「さっき食べたでしょ」と説得しようとしたり、食べていないという思い込みを否定をしてはいけません。本人は「食べさせてもらっていない!」とますます興奮して怒ることになってしまいます。
そんな時は、「すぐに準備しますね」と声をかけたり、少量の果物を食べさせるなどして対応しましょう。それでもまだ満足しない場合や、食事の後に何度もこのようなことを繰り返すようであれば、最初から食事の量を少な目に調整するなどの工夫をしてみることをおすすめします。
認知症の方とコミュニケーションを取る際の注意点
最後に、認知症の方の自尊心を守るために、絶対してはならないコミュニケーションについて紹介します。
相手を無視・放置しない
コミュニケーションが取れないからといって、認知症の方を無視したり放置するようなことは絶対にあってはなりません。
認知症は言葉や状況の理解が難しくなるものの、悲しい・腹が立つなどの感情は残っていると言われています。
そのため、無視や放置といった行為は相手の不満や不安を煽り、感情を爆発させてしまう引き金になりかねません。大きな声で怒鳴ったり、暴力的になるケースもあるので注意が必要です。
指示や命令をしない
前述もしたように、認知症の方は言葉を理解していないように見えても感情はしっかりとあります。
そのため、「早くして」「動かないで」など、指示や命令をすれば不愉快だと感じるでしょう。そして不満だけが募り、信頼関係に悪影響を及ぼします。
特に認知症の方が急に立ち上がった時などは、怪我やリスクを回避しなければならないため、咄嗟に「じっとしてて!」のような言葉が出てしまうかもしれません。
それでもやはり相手を刺激しないよう、「どうされましたか?」と立ち上がった理由を聞いたり、「座りましょうか」と優しく声をかけるようにしてください。
何度も言いますが、まずは相手の行動や発言を受け止めることがポイントです。「あなたの気持ちを大事に思っています」という思いが伝われば、認知症の方も安心して過ごすことができるでしょう。
受け止めの姿勢で認知症の方とコミュニケーションを取ろう!
認知症の方とのコミュニケーションを上手に取ることは、本人の自尊心を守るため、安心して過ごしてもらうために必要不可欠です。
本記事では、短い言葉を選ぶ、ジェスチャーを使うなど様々なコツを紹介しましたが、どれにも共通することは「相手の言動を一旦受け止める姿勢」です。このことを意識しながらコミュニケーションを図り、認知症の方との良い信頼関係を築いていきましょう。
私たち日本保健福祉ネイリスト協会では、2012年の活動開始以来、福祉ネイルという美容を通じて、高齢者の方々が輝きある日々を送れるようサポートしてきました。
認知症の方にネイルを行う際は、認知症の特徴を身体面の変化や心理背景、感情の変化などの観点から理解して施術することを心掛けております。
また、福祉ネイリストスクールのカリキュラムでは、一般的な高齢者の方への接し方について学ぶほかに、認知症の種類や接し方のコツを学ぶ時間も設けております。事例や具体的な話し方など、実際の現場でのリアルな声を認定校講師よりお伝えしながら学んで頂けるのは、当協会の強みであると考えます。
「施設に美容サービスを導入したい」とお考えの際は、ぜひ日本保健福祉ネイリスト協会にご相談ください。
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