高齢者レクリエーションに期待できる効果とは?目的やポイントも解説
いつまでも健康で長生きするには、規則正しい生活や適度な運動などが重要ですが、その取り組みの一環として、多くの介護施設では利用者や入居者向けにレクリエーションを実施しています。
そこで今回は、デイサービスやデイケア、老人ホームなどの介護施設で実施される高齢者向けレクリエーションについて、その目的や効果、心身機能の向上に適したレクリエーションの種類、具体的な活動内容をご紹介します。
また、レクリエーションの効果をより高めるためのポイントについても解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
高齢者向けレクリエーションの目的とは?
仕事や子育てを終えて人生の生きがいがわからなくなったり、環境の変化によって大きなストレスを抱えている高齢者は少なくありません。さらに、加齢に伴う身体機能の衰えや疾患も加味され、うつ病を発症したり、認知症の進行が早まることもあるのです。
高齢者向けレクリエーションの目的はこのような心身の負担を軽減することや、身体機能の向上、健康維持、脳の活性化、人とのコミュニケーション、喜びや生きがいの創出など多岐にわたります。またこれらの目的が達成されることで、ADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)の向上を目指していきます。
関連記事:「高齢者レクリエーションの目的・意義とは?効果や種類、行う際のポイントも紹介!」
高齢者レクリエーションに期待できる4つの効果
高齢者向けレクリエーションに期待できる効果とはどのようなものでしょうか。具体的に見ていきましょう。
期待できる効果①:認知症の予防
内閣府の「平成29年版高齢社会白書」によると、2012年時点での認知症高齢者数(65歳以上)は462万人で、65歳以上の約7人に1人(有病率15.0%)が認知症であると報告されています。そして、2025年には約5人に1人に増加すると推計されています。
このような背景から、老人ホーム等の介護施設においても、認知症の発症を予防したり、脳の機能を維持するための取り組みは欠かせないものとなっているのです。
特に介護施設に入所している高齢者は施設の中で過ごす時間が多いため、日常生活の中で脳を刺激するレクリエーションを取り入れることが望ましいでしょう。
例えば、手や頭を使うレクリエーションは日常生活では使われない脳の領域が刺激でき、脳機能が活性化することによって、認知症の予防や症状の進行を遅らせる効果が期待できます。
期待できる効果②:筋力低下の防止
高齢者は年齢とともに活動量が減少して筋力低下を起こしやすいのですが、筋力が低下すると日常生活の動作に支障をきたしたり、転倒や骨折のリスクも高まります。
そのため、老人ホーム等の介護施設では意識的に身体を動かすレクリエーションを取り入れて、身体機能の低下を予防することが大切です。日常的に身体を動かすことで、筋力低下の防止に加えて、運動不足の解消やストレス解消効果も期待できるでしょう。
期待できる効果③:気持ちが前向きになる
加齢に伴う衰えや心身の不調、外出する機会の減少などから、高齢者はうつ病になりやすいと言われています。
高齢者レクリエーションでは、そんな高齢者が抱える心身のストレスを解消し、「楽しい」「嬉しい」を感じてもらうことも大きな意義の一つです。ふさぎ込みがちな気持ちを前向きにする効果や、積極性の創出に期待できる上、日常生活の中で楽しみを持つことはQOLの向上にもつながるでしょう。
加えて、レクリエーションは高齢者の自尊心や自己肯定感を高めたり、他者とコミュニケーションを取るきっかけにもなります。
期待できる効果④:生きがいが見つかる
「生きがい」とは、「生きる価値や意味を与えるもの」「生きていることに対して充実感などを感じること」だと定義されています。生きがいを持つことでQOLが向上し、認知症が予防できたり、健康状態が改善すると言われています。
レクリエーションでは、老人ホーム等の介護施設で働くスタッフだけでなく、ボランティア活動をされている方や、地域の人々と交流することもあり、このような新しい出会いが、高齢者にとって生きがいや喜びを感じるきっかけになることもあります。
レクリエーションは単なる遊びや運動ではなく、高齢者の心と体にとって非常に大切な役割を担っているのです。
心身機能向上に効果的なレクリエーション
多くの介護施設では毎日のようにレクリエーションが行われるため、活動内容やプログラムを考えるのは一苦労です。
そこで次に、心身機能の向上に効果的なレクリエーションの種類と、おすすめの活動内容についてご紹介していきます。
身体を動かすレクリエーション
【身体を動かすレクリエーション例】
- 軽い体操やダンス
- 椅子エクササイズ
- 風船を使ったバレー
- 輪投げ
- お手玉
- 手芸
- ボール遊び
- ボーリング
- 散歩
- 遠足 など
身体を動かすレクリエーションには軽い体操やダンス、椅子に座ったままできるエクササイズなどの室内でできるものから、散歩や遠足などの外出レク、ボール遊びやボーリングなど集団で楽しめるものもあります。身体を動かすレクリエーションを日常的に取り入れることは、健康の維持に加えて、生活習慣病の予防や規則正しい生活が目指せるなどのメリットもあります。
ちなみに、ゲームをする際に勝ち負けに関するトラブルが発生しそうであれば、個人戦よりもチーム戦の方がおすすめです。高齢者の要介護度に合わせて、無理のない範囲で楽しみましょう。
脳を刺激するレクリエーション
【脳を刺激するレクリエーション例】
- クイズ・なぞなぞ
- 読書
- パズル
- 間違い探し
- 記憶ゲーム
- 歌唱
- 合奏
- 塗り絵
- 折り紙
- 旗揚げゲーム など
クイズや読書、パズル、間違い探し、記憶ゲームといったレクリエーションには、脳を活性化する効果が期待できます。内容に季節の要素を取り入れることで四季の移ろいを感じてもらうことができますし、歌唱や合奏では昭和の名曲や歌謡曲を取り入れることで以前の生活を思い出すきっかけにもなるでしょう。
また、塗り絵や折り紙といった手先を使う作業は、脳トレの要素を含むだけでなく、手指のリハビリにもなるレクリエーションです。
さらに、「歌いながら手を叩く」「合奏しながら足踏みする」といった複数の作業を組み合わせることもおすすめ。このようなマルチタスクトレーニングを含んだレクリエーションは、認知症の予防効果を高めることが期待できます。難しそうな場合は難易度を下げたりサポートをしたりして、楽しく取り組めるように工夫しましょう。
気分転換に効果的なレクリエーション
【気分転換に効果的なレクリエーション例】
- 音楽鑑賞
- カラオケ
- 舞台鑑賞
- 美術鑑賞
- 福祉ネイル
- アロママッサージ
- メイクセラピー
- アニマルセラピー
- 花見 など
例えば私たち福祉ネイルでは、ネイルサロンに行くことが難しい高齢者や認知症の方などを対象として、ネイルケアやハンドトリートメントを施術する「訪問ネイル」をご提供していますが、ネイルやアロママッサージ、メイクセラピーといったレクリエーションは、ストレス解消やリラックス効果が期待できるだけでなく、積極性が向上したり、認知症の予防にも効果があると言われています。
また芸術に触れることや、動物・自然との触れ合いも、ストレスの解消や気分転換に効果的です。外出レクリエーションの一環として実施するのも良いですが、出張サービスを利用することで、お出かけするのが難しい利用者にも楽しんでもらえるでしょう。
関連情報:KNBテレビのNews everyで富山県初の福祉ネイリスト認定校の開校が紹介されました(2023年8月23日 放送)
高齢者レクリエーションの効果を高めるには?
レクリエーションを間違ったやり方で行うと、逆効果となることがあります。
高齢者向けレクリエーションの効果を高めるにはどのようなことに気をつけたら良いのか、そのポイントについてご紹介していきます。
高齢者のペースに合わせる
レクリエーションの効果を高めるには、高齢者のペースに合わせて実施することが重要です。良かれと思って高齢者にレクリエーションを無理強いさせてしまうと、かえってストレスの原因となってしまいます。あくまで本人の意思を尊重し、無理のない範囲で楽しめるレクリエーションを心がけたいところです。
特に身体を動かすレクリエーションでは、身体への負担やケガの危険性がないか、睡眠不足ではないか、食事はきちんと取れているかなど、安全や健康にも配慮して参加の有無を検討する必要があるでしょう。
また、内容やルールの理解が難しそうだと感じたらプログラムを簡単なものに変更したり、逆に簡単そうであれば他の要素を取り入れてマルチタスクにしてみたりと、それぞれの状況に応じて臨機応変に対応するのが望ましいです。
個人の興味のあるものを聞き出す
レクリエーションの効果を高めるために、興味があるレクリエーションを高齢者から直接聞き取るのもおすすめです。具体的なアイデアがなくても、趣味や職歴、特技、好きなこと、得意なことなどを参考に提案すると良いでしょう。
また反対に、苦手なことや不得意なことを把握するのも重要です。例えば、歌うのが苦手な高齢者に対して歌唱を強要するのはよくありませんので、手拍子や合いの手を入れてもらったり、楽器演奏してもらったりといった歌唱以外の方法で参加を促すのがおすすめです。
心のこもった声かけをする
レクリエーションの効果を高めるには、心のこもった声かけも大切な要素です。レクリエーションが盛り上がると、友達のような口調になってしまったり、子ども扱いするような言葉遣いになってしまう人がいますが、そのような言動によって高齢者の自尊心が低下するケースがあります。
自尊心の低下は自信喪失やストレスを引き起こす要因となりますので、たとえレクリエーションが盛り上がったとしても、他の介護サービスを提供する時と同じようにマナーと礼儀をわきまえて、丁寧な対応を意識してください。
なお、高齢者向けレクリエーションを実施する際の注意点や、盛り上げるコツについては、「介護施設で高齢者向けレクリエーションを行う時の注意点とは?盛り上げるポイントと一緒に紹介」で詳しく解説しています。ぜひ参考にご覧ください。
高齢者レクリエーションにはさまざまな効果が期待できる!
今回は、介護の現場における高齢者向けレクリエーションの目的や期待できる効果、心身機能の向上に効果的なレクリエーションの活動内容、レクリエーションを行う際のポイントなどをご紹介しました。
レクリエーションには身体機能の低下や精神の安定などの効果があり、ひいては介護士の負担を軽減することにもつながります。レクリエーションを実施する際は、その目的や意義、期待できる効果を意識しながら取り組むと良いでしょう。
なお、私たち日本保健福祉ネイリスト協会では2012年の活動開始以来、「福祉ネイル」という美容を通じて、高齢者の方が輝きある日々を送れるようサポートしてきました。ネイルの技術はもちろんですが、それ以上に「接遇」に重きをおき、福祉ネイルの利用者様に感動と喜びを提供することを使命としています。
また、ユマニチュードを取り入れたサービスで、もっと多くの高齢者の方に癒しや希望を感じてもらえる機会が増えるよう、福祉ネイリストの育成や福祉ネイルの研究集会にも力を入れています。
「施設に美容サービスを導入したい」とお考えの際は、ぜひ日本保健福祉ネイリスト協会にご相談ください。
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