介護施設で高齢者向けレクリエーションを行う時の注意点とは?盛り上げるポイントと一緒に紹介

老人ホームやデイサービス等の高齢者向け介護施設では、しばしば職員によるレクリエーション(レク)が催されます。

今回は、高齢の方や障がいを持つ方に福祉ネイルを提供している私たちが、高齢者向けのレクリエーションを準備・実施する上での注意点や、盛り上げるコツについて解説していきます。

高齢者向けにレクリエーションを行う目的や効果とは?

まずは、高齢の方が入所または通所する介護施設等において、なぜ定期的にレクリエーションを実施するのか、その目的を簡単に確認していきましょう。

介護施設等で、利用者である高齢の方に向けたレクリエーションを実施する目的としては、大きく以下3つが挙げられます。

  1. 楽しみながら脳や身体を動かすことによる機能の維持、向上、活性化
  2. 周囲の人とコミュニケーションをとる機会の創出、孤独感や不安感の緩和
  3. 自分が好きなこと・できること等の「生きがい」の再発見やQOLの向上

高齢になると、記憶力や認知機能といった脳機能や筋力、身体機能等はどうしても低下していきます。しかし脳や身体機能の衰退が進行するスピードは、習慣的に身体を動かしたり、他者と交流する等の刺激を受けることにより鈍化・改善することができると言われています。

レクリエーションは、高齢者にとって楽しみながら身体を動かし、適度な刺激を得ることができる有意義な時間となるのです。

介護施設等で行われるレクリエーションの種類の具体例

実際に介護施設等で実施されるレクリエーションの具体例としては、以下のような種類が挙げられるでしょう。

  • お手玉遊び:お手玉を的に向けて投げたり、蹴ったり、持ち替えたりする
  • 体操やダンス:全身を効率よく使い、筋力やバランス感覚を維持・向上させる
  • 脳トレ:パズルやなぞなぞ、計算、ボードゲーム等を通して脳を使って楽しむ
  • 風船バレー:ケガのリスクが少ない風船を使い、全身を使って他の人と一緒に運動する
  • 歌:合唱やチーム対抗の歌合戦、イントロクイズ等で音楽を楽しみ脳を活性化する 等

なお、高齢者向けにレクリエーションを行う目的や種類については「高齢者レクリエーションの目的・意義とは?効果や種類、行う際のポイントも紹介!」の記事でも詳しくご紹介しています。ぜひ、こちらも併せてご確認ください。

高齢者向けレクリエーションを【準備する】際の注意点

高齢者向けレクリエーションを【準備する】際の注意点

目的がわかったところで、ここからは介護施設等で高齢者向けにレクリエーションを企画し、準備する上で知っておくべき注意点を確認していきましょう。実際にレクリエーションの準備を進める際の流れに沿って紹介していくので、企画をする際の参考にご覧ください。

メニューは、誰でも楽しめる簡単なものがおすすめ

まずレクリエーションの内容については、以下2点を基準に決定するようにします。

  • 参加が想定される利用者様の年齢、身体状況、認知機能等に合っているか
  • 予測される参加人数に合った内容か、また全員で実施可能なスペースがあるか

介護施設等でのレクリエーションには、できるだけ多くの利用者様が楽しめる内容であることが求められます。そのため、一部の利用者様の身体状況や認知機能に合わせるのではなく、施設に入所・通所されているすべての方が簡単に楽しめるものを実施しなければなりません。

内容について複数の候補がある場合は「より簡単に楽しめそう」なもの、または「参加者の状態に合わせてルール変更や補助体制を構築しやすいもの」を選ぶと良いでしょう。

複数人のスタッフでしっかりシミュレーションしておく

レクリエーションには、不測の事態やトラブルがつきものです。そこでおすすめしたいのが、複数の職員でレクリエーションの最初から最後まで、頭の中でシミュレーションすること。

使う予定だった道具の種類や形状、柔らかさの他、より適した隊形等、一人だけで準備していては気付けなかった危険性や改善点が見えてきて、レクリエーション全体の完成度を向上させられるでしょう。

開始前の「アイスブレイク」を忘れないようにする

レクリエーションの内容や流れを考える際、一緒に考えておきたいのがアイスブレイクです。

アイスブレイクとは、その場の緊張を緩和し、和やかにするための行動のこと。例えば握手や肩もみ、ハイタッチ等のちょっとしたスキンシップの他、皆で一緒に声を出す、手拍子をする等が、高齢者向けレクリエーションに際してのアイスブレイクとなります。

誰でもできる簡単な動きで、参加する高齢者の緊張がほぐれ「これから楽しいことをするぞ」という気持ちになれるようなことを、アイスブレイクに設定すると良いでしょう。

事前のルールの説明はしっかりと、わかりやすく

はじめのルール説明も、楽しく、わかりやすいよう伝え方を工夫できれば、レクリエーションの一部となります。具体的には、大きな声でゆっくりと話すこと、そして大きな身振り手振りを意識したり、介護職員が実際にやって見せながら説明すると伝わりやすくなるでしょう。

シミュレーションをする際に、説明の言い方・伝え方についても、ある程度考えておくことをおすすめします。

高齢者向けレクリエーションを【実施する】際の注意点

高齢者向けレクリエーションを【実施する】際の注意点

続いて、実際に高齢者向けのレクリエーションを行う場合に配慮すべき注意点について、紹介していきます。

参加者様の状態に合わせ、しっかりと安全に配慮する

介護施設等でレクリエーションを実施する際に最も注意すべきことは、参加される高齢者への安全面の配慮です。具体的には、以下を参考に参加者様の身体状況に合わせた対策・援助を行うことが重要になってきます。

車いすの方に配慮すべきことや注意点

  • 所定の位置に来たら必ず車いすをロックし、レクリエーション中に落ちないよう近くに人員を配置する
  • 身体が傾く場合は、お尻の下等に畳んだタオルやクッションを入れてまっすぐにする
  • ケガを避けるため、隣の人とは手を繋げるくらいの余裕を持った距離感で座ってもらう

片麻痺がある方に配慮すべきことや注意点

  • 身体が傾いて椅子から落ちるのを防ぐため、背もたれやひじ掛けのある椅子を用意する
  • レクリエーション中に誤って転倒する恐れがあるため、麻痺がある側の斜め後ろに人員を配置する
  • レクリエーション中に右麻痺の人と左麻痺の人の肘がぶつかってしまわないように、席順に注意する

耳が遠い方に配慮すべきことや注意点

  • レクリエーションの内容やルールをきちんと理解できるように、ボードや人員を使ってサポートする
  • 最終的に説明が聞こえたか、理解できたかどうか、職員が1対1で声掛けして確認する
  • 耳が遠くても疎外感を感じず、レクリエーションを楽しめるよう声掛けをし続ける

言葉遣いや接し方等、参加者様に失礼のないようにする

介護者にとって、レクリエーションに参加される高齢者は皆さん人生の大先輩です。介護施設等でレクリエーションを実施する時は、高齢者に対して敬意を持って接し、丁寧な口調で話しかけるようにしてください。

子どもに接するような言葉遣いや、上から目線の態度を取ると、せっかく参加してくれた方に嫌な思いをさせてしまいます。内容に集中し、しっかり楽しんでもらえるように、レクリエーション中の態度には十分注意しましょう。

参加者様の負担にならないように、短時間で区切る

楽しいレクリエーションも、実施時間が長くなると高齢者の負担となります。参加者の中には、無理をして長時間参加してしまう方もいらっしゃいますので、一つひとつのレクリエーションは短時間で区切り、参加者の心身の状態に合わせて切り上げやすいようにしましょう。

また、レクリエーションの切れ目には「疲れていませんか」「一度水分補給をしましょう」「休んだり、ご自身の判断で終わりにしてもらっても良いですよ」等、休憩や終了を促す声掛けをするのもおすすめです。

あくまで本人の意思を尊重し、参加を無理強いしない

脳や身体機能の維持・向上の効果が期待できるレクリエーションですが、参加することがご本人にとってストレスになるようなら、無理に参加してもらう必要はありません。

やりたくないこと・興味がないことを無理強いされるのは、誰にとっても辛いものです。レクリエーションは、高齢者本人の趣味や興味に合うものに参加してもらえれば十分であり、さまざまな人が思わず参加したくなるような内容のレクリエーションを幅広く企画・実施することが大切だと理解しておきましょう。

高齢者向けレクリエーションを盛り上げるコツ

高齢者向けレクリエーションを盛り上げるコツ

注意点と併せて、高齢者向けのレクリエーションを盛り上げるためのコツも3つご紹介します。

要介護度が近い人を集めて行う

身体状況や認知機能が近い高齢者を集めてレクリエーションを実施すると、内容の企画や援助のための計画を立てやすくなる上、参加者全員で楽しんでいただけるメリットがあります。

そのため、準備段階で要介護度別に複数のレクリエーションプランを策定し、時間帯や場所を分けて実施するのも、レクリエーションを盛り上げ、楽しい時間にするためのポイントと言えるでしょう。

できるだけ少人数、毎回同じメンバーで行う

顔見知りが増えると安心感が生まれ、孤独感や不安感が和らぎます。そのため、できるだけ少人数で、毎回同じようなメンバーでレクリエーションに参加できるようにすると高齢者の間に連帯感が生まれて、コミュニケーションが促進される場合があるのです。

高齢者向けのレクリエーションを盛り上げたいなら、開催する曜日や時間帯、参加メンバーを固定して、互いの名前や顔を覚えやすくしてみるのも良いでしょう。

職員も参加者様と「一緒に楽しむ」姿勢で臨む

レクリエーションを進行する介護職員本人がしらけていたり、淡々と進行するだけでは、楽しい雰囲気は生まれません。高齢者向けのレクリエーションでは、企画・進行をする介護者本人が参加者様と一緒に楽しむという姿勢で臨み、以下のような声掛けをして盛り上げましょう。

  • 説明は細かく区切り「ここまでやってみましょう」「この後は?」等と随時声かけする
  • 自分が失敗する様子を見せて「私のまねをしないでくださいね」等と声をかけ、楽しい雰囲気でレクリエーションをする上での注意点を伝える
  • レクリエーションの開始時や合間に「せーの!」「よいしょ!」等と積極的に合いの手を入れる
  • 楽しみ方は人それぞれなので、単なる勝敗や成果だけでなく「応援では一番」「笑顔が良かったです」「ユニークでおもしろい」等、各参加者を1回以上褒めるようにする

注意点を踏まえ高齢者が楽しめるレクリエーションを企画・実施しよう

高齢者にとってレクリエーションは、脳や身体機能の維持・向上に役立つだけでなく、楽しい気持ちや生きる意欲を取り戻す機会にもなり得ます。また、普段から接する介護職員や他の入居者・通所者の方々と交流し、つながりを作るきっかけの一つにもなるものです。

安全上必要な注意点や配慮、盛り上げるためのコツも知った上で、見ているだけで心が動き、思わず参加したくなるような楽しいレクリエーションの開催を目指したいですね。

なお、一般社団法人 日本保健福祉ネイリスト協会では、高齢者や障がいのある方々に楽しみや喜びを感じていただける機会の一つとして、福祉ネイルというサービスを提供しています。

福祉ネイルとは、ご要望に合わせて介護施設等やご自宅に伺い、その方の身体状況や環境に合った施術を一般的なネイルアートよりも短時間で提供するものです。また施術中は、認知症等に有効とされるユマニチュードに基づいた声掛けやコミュニケーションも実施しています。

当協会所属の福祉ネイリストは、万が一の事故に備えて全員が保険に加入している他、マニュアルに沿った感染症対策を取った上で施術をさせていただいております。「レクリエーションの一貫としてネイル等の美容サービスの導入を検討したい」とお考えの際は、ぜひ一度、日本保健福祉ネイリスト協会までご相談ください。

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