高齢者レクリエーションの目的・意義とは?効果や種類、行う際のポイントも紹介!

高齢者向けのレクリエーションは、自立した利用者様から寝たきりの方まで、誰もが楽しめてリラックスできるものを提供することが大切です。

そのためにはまず、レクリエーションを行う目的や意義を正しく理解する必要があるでしょう。

そこで本記事では、高齢者向けレクリエーションの目的や意義について解説し、実際にレクリエーションを企画・実施する際の注意点やポイントも紹介します。

利用者様に楽しんでもらえる効果的なレクリエーションの企画に役立ててください。

高齢者レクリエーションの目的・意義とは何か

介護施設や老人ホームなどで行われる高齢者レクリエーションは、利用者様の生活に楽しみを提供するだけではありません。

身体機能や認知機能の維持・向上のほか、自分に自信を取り戻してもらうためなど、さまざまな目的があります。

目的・意義①:身体機能の維持・向上

高齢者向けレクリエーションの目的・意義の一つには身体機能の維持・向上があげられます。

高齢者になると筋力や柔軟性が低下し、立つ・歩く・座るといった日常的な動作が難しくなります。その結果、体が動かせなくなることにストレスを感じたり、自分に自信をなくしてしまい「何もしたくない」「楽しくない」など、体を動かすこと自体に消極的になってしまう方も少なくありません。

とくに寝たきりの高齢者の方においては、1週間寝たままの状態を続けるだけで、10〜15%程度の筋力が低下すると言われています。

つまり、高齢者の方の身体機能を維持・向上するためには、日々の生活の中で体を動かす機会をつくることが必要不可欠なのです。

そして高齢者レクリエーションは、その重要な役割を担っており、身体機能を向上させる運動や体操を定期的に行うことで筋力や柔軟性の維持および向上を目指します。

目的・意義②:脳の活性化

高齢者向けレクリエーションには、脳を刺激して活性化させるという目的もあります。

高齢者になると加齢による脳の萎縮が起き、記憶力や判断力、理解力などの認知機能にかかわる能力が低下していきます。これらの力が低下してしまえば認知症が進む原因にもなるため、レクリエーションで脳を活性化させることが重要なのです。

脳トレとも言われるゲームやクイズなどのレクリエーションでは、記憶・学習・感情コントロールの役割を担う「前頭前野」を刺激します。

また、運動や体操などのレクリエーションも脳の活性化に効果的で、体を動かすことによって脳への血流量が増え、脳が活性化すると言われています。

つまり、このように脳トレや運動などを取り入れて、普段あまり使わない脳の部分を刺激することは、認知症を予防したり進行を遅らせるために非常に役に立つのです。

目的・意義③:コミュニケーションの促進

高齢者向けのレクリエーションの目的には、コミュニケーションの促進もあげられます。

高齢者になると身体機能や意欲の低下により、他者との関わりを持つことが煩わしくなってしまう方が多く、孤立しやすいという特徴があります。

そのため、レクリエーションを通じて、施設のスタッフの方や他の利用者の方と交流することで、コミュニケーションを取る楽しさを思い出してもらうことが大切なのです。

また、他者との関わりが多くなることは、生活への張り合いにもなるため、認知症の軽減や予防にも繋がると言われています。

ADLとQOLを高める

高齢者向けレクリエーションの目的として、ADLとQOLを高めることもあげられます。

ADLとは「日常生活の動作」を意味し、移動・食事・排泄・入浴・更衣などの日常生活を送るうえで必要最低限の動作のことです。ADLが低下する原因には、身体機能・認知機能・精神状態・社会環境の悪化があげられ、これらはまた、ADLの低下によってさらに悪化するという相互作用を持ちます。

一方、QOLは「生活の質」のことを指し、介護業界では「自分らしい充実した生活ができているかどうか」という意味で用いられます。これは高齢者自身の主観的な幸福度・満足度・充実度によって測られるので、明確な数値では表せませんが、高齢者レクリエーションにおいては非常に大切な考え方なのです。

そして、ADL(日常生活の動作)を高めることはQOL(生活の質)を高めることに繋がります。つまり、高齢者が自身の生活に充実感や楽しみを感じるためには、日常動作がスムーズに行えることが関係しているということです。

また、厚生労働省の調べによると「一人暮らしの人や友人とほとんど交流のない人は、夫婦同居や友人と週1回会っている人に比べて、認知症の発症リスクが8倍になる」ということがわかっています。

参照:厚生労働省「認知症ケア法-認知症の理解

つまり、他者と関わること自体がコミュニケーションとなり、脳への刺激や幸福感、生きる楽しさに繋がるため、結果としてQOL(生活の質)が高まるのです。

そのため、身体機能や知能機能の向上を通じて、他者とのつながりも持つ高齢者レクリエーションは、ADLとQOLの両方を高めることにおいて、非常に重要なものであることが分かるでしょう。

<目的別>高齢者レクリエーションの種類

目的別:高齢者レクリエーションの種類

心身共に、健康の維持・向上を目指すためには、運動・脳トレ・コミュニケーションなど、さまざまな要素を複合的に組み合わせることが大切です。ここでは、身体機能や認知機能など、レクリエーションの目的別にどんな種類があるかを簡単に紹介します。

身体機能を上げるレクリエーション

身体機能を高めるレクリエーションには、体操や運動などの体を動かすものがあげられます。

体を動かすといってもその種類は多く、立って行うもの、座ったままできるもの、ボールなどの道具を使うもの、ラジオ体操など道具なしで行うものなどと様々です。

高齢者の方の健康状態や得意不得意、動かしたい体の部位などの様子を見ながら、一人ひとりに合ったレクリエーションを提案すると良いでしょう。

それではここで、身体機能を高めるレクリエーションの一例を紹介します。

スリッパとばし

スリッパ飛ばしとは、スリッパを飛ばして床に置かれたペットボトルや空き缶などを倒したり、スリッパが飛んだ距離を競い合うレクリエーションです。

座ったままでもできるので、多くの高齢者の方が楽しめます。

風船バレー

風船バレーは、円陣になり風船を床に落とさないようパスを渡し合ったり、バレーボールのように相手のコートに風船を入れるレクリエーションです。

座ったままでもできて、肩や腕、腹筋を使うだけでなく、ゆっくりと動く風船をめで追うため、動体視力や空間認識力の訓練にもなります。

音楽に合わせた体操

高齢者の方に馴染みのある曲にあわせて体を動かす体操レクリエーションです。

立って行えば全身運動になり、座ったままでも肩回しや足踏みなど部分的に動かすことができます。

また、体操の動きを覚えてしまえば、道具なしでできるレクリエーションとして日常的に行えるでしょう。

脳を活性化させるレクリエーション

脳を活性化させるレクリエーションには、クイズやなぞなぞといった頭を使うもの、折り紙や指体操などの指先をよく使うものがあります。

クイズやなぞなぞのいわゆる脳トレは、難しい方が効果的に思うかもしれませんが、決してそうである必要はありません。むしろ、比較的簡単に解ける方が正解できるので達成感が得やすく、楽しく続けられるでしょう。

基本的に脳トレも指先を動かすレクリエーションも座ったままできるものなので、車椅子で生活をしている高齢者の方もそうでない方も一緒に楽しみながらできる内容となっています。

それでは、脳を活性化させるレクリエーションの一例を見ていきましょう。

昭和クイズ

高齢者にとって懐かしい昭和時代がテーマのクイズゲームです。昔に流行った音楽やファッション、出来事などを年代別に出題していきます。

クイズを通して昔のことを思い出すことは、記憶を引き出すトレーニングになるため、脳の活性化にとても効果的です。

また、昔話に花を咲かせたり懐かしい気持ちになることで、満足感や安心感が得られ、自分の存在意義を再確認し、孤独感も和らぐでしょう。

指先体操

指先体操はその名の通り、指先を動かす体操で、道具や広いスペース、事前準備の必要がないためすぐにどこでもできるレクリエーションです。

やり方には色々なパターンがありますが、簡単なものであれば指の曲げ伸ばしを繰り返すグーパー体操があります。他にも親指から順に折り曲げて、小指から順に広げていくといった体操もあるので、動かす速さを変えてみたりしてみましょう。

塗り絵

塗り絵は、絵全体のバランスを考えながら紙に描かれた形を塗っていく作業なので、脳の活性化が期待できるレクリエーションの一つです。また、色鉛筆を握って細かい絵柄に色を乗せていくことは、指先のトレーニングにもなります。

ただし、子供向けのような簡単な絵柄を選ぶと、高齢者の方の自尊心が傷つく可能性があるため、大人向けの塗り絵を選ぶようにしましょう。

リフレッシュ目的のレクリエーション

リフレッシュ目的のレクリエーションには、カラオケや音楽鑑賞、福祉ネイル、ハンドマッサージなどがあげられます。

高齢者の方は、身体機能や認知機能の衰えによる不安や焦り、孤独感、自身の喪失など、日々の生活に様々なストレスを抱えています。そこで、少しでもこのようなストレスを和らげるために、リフレッシュを目的としたレクリエーションは実施するべきなのです。

とくに、福祉ネイルやハンドマッサージといったレクリエーションは、高齢者の方の手に触れ、施術中も同じ高さの目線で会話をすることが多いので、「あなたのことを大切に思っている」という気持ちが伝わりやすいでしょう。

また、手から感じる人の温かみによる安心感、キレイになった自分の爪や手をみたときの高揚感など、他のレクリエーションでは得られにくい効果も期待できます。

高齢者レクリエーションを行う際のポイント・注意点

高齢者レクリエーションを行う際のポイント

高齢者レクリエーションに参加する利用者様には、自立できる方や車いす生活の方、寝たきりの方などさまざまです。

それぞれの健康状態に合わせてレクリエーションを提案することはもちろん、レクリエーションの目的や意義を理解した上で、利用者さんが「楽しい」と思えるような内容を企画することも大切です。

ここでは、楽しく効果的なレクリエーションを行う上でのポイントや注意点を紹介します。

安全に配慮する

高齢者レクリエーションで最も気をつけるべきポイントは、安全への配慮です。

活動内容によっては体を大きく動かすものもあり、転倒して怪我をしたり、体への負担が大きすぎて体調不良に繋がる可能性もあります。

また、運動以外でもハサミなどの道具を使う際は誤って指を怪我してしまったりしないよう注意してください。

レクリエーション参加者全員に目が行き届くよう、少人数グループでの活動をするなどして、万が一のことが起きた場合でもすぐに対応できるよう、徹底した安全管理を行いましょう。

無理強いはしない

高齢者レクリエーションは、身体機能や認知機能の向上のためにおすすめではありすが、決して無理強いはしないように気をつけましょう。

レクリエーションそのものに乗り気でない方、運動やグループ活動が苦手な方もいるでしょう。そのような方たちを無理矢理レクリエーションに参加させてしまっても「楽しい」と思えないどころか、かえってストレスとなってしまうかもしれません。

そのような場合は、まず、利用者様同士で会話をするきっかけづくりや、スタッフの方とのコミュニケーションを深めるところから始めてみると良いでしょう。

心の距離が縮まれば、レクリエーションに興味をもってくれるようになるかもしれないので、決して強制はせず、利用者様それぞれのペースに合わせることが大切です。

自尊心を傷つけない程度の簡単なルールにする

レクリエーション参加者全員が「楽しい」と思えるように、難しすぎず簡単すぎないルールにすることもポイントです。

難易度が高すぎるものだと楽しめなかったり、逆に子供向けの内容など簡単なものだと自尊心を傷つけてしまうかもしれません。

自尊心が傷つくことで、自信を失ってしまったり、ストレスを感じる原因にもなりえます。そうならないためにも敬意を払ってレクリエーションを企画・進行しましょう。

ユマニチュードを意識する

ユマニチュードとは、「人間らしさを取り戻す」という意味をもつ言葉で、認知症ケア技法の一つです。

この方法では、介護を行う際の心構えとして「見る」「話す」「触れる」「立つ」を提唱しています。ちなみに、それぞれの具体的なアクションは次の通りです。

  • 見る…同じ目線の高さで、近い距離で、しっかりと目を合わせる
  • 話す…優しく穏やかに、ケアやレクリエーションの内容を実況する
  • 触れる…手のひら全体で優しくゆっくり触れる
  • 立つ…立つ環境を作り、一日で合計20分は立つようにする

レクリエーションを実施する際は、これら4つのアクションを取り入れて接してみましょう。そうすることで、高齢者の方の自尊心や安心感が満たされ、身体機能や認知機能にも良い影響が期待できます。

また、ユマニチュード技法は認知症以外の高齢者の方と接する際にもおすすめで、「あなたのことを大切に思っています」という気持ちが伝わりやすくなるため、介護に携わる方はぜひ意識してみてください。

高齢者レクリエーションの目的を理解して効果的に取り組もう

高齢者の方にとってレクリエーションは、心と体の健康を維持するために欠かせません。レクリエーションの種類には体を動かすもの、脳トレになるもの、リフレッシュになるものなどがありますが、いずれも利用者様の健康状態や興味、得意不得意などを考慮して提案することがポイントです。

日本保健福祉ネイリスト協会では2012年の活動開始以来、「福祉ネイル」という美容を通じて、高齢者の方が輝きある日々を送れるようサポートしてきました。ネイルの技術はもちろんですが、それ以上に「接遇」に重きをおき、福祉ネイルの利用者様に感動と喜びを提供することを使命としています。

また、ユマニチュードを取り入れたサービスで、もっと多くの高齢者の方に癒しや希望を感じてもらえる機会が増えるよう、福祉ネイリストの育成や福祉ネイルの研究集会にも力を入れています。

「施設に美容サービスを導入したい」とお考えの際は、ぜひ日本保健福祉ネイリスト協会にご相談ください。

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