高齢者の「やることがない」は要注意!好きなことの見つけ方と過ごし方
高齢者の中には「やることがない」という理由で、一日中部屋にこもったり、誰とも話したくないと塞ぎ込む方もいます。
しかし、何もせずに毎日を過ごすことは認知機能・身体機能の低下にも繋がるため、何か好きなことを見つけてあげることが重要です。
そこで本記事では、やることがなくなる原因やそれに伴うトラブルを解説した後、やりたいことを見つける方法とおすすめの過ごし方を紹介します。
高齢者の方に生き生きと過ごしてもらうためにも、ぜひ参考にしてください。
目次
高齢者が「やることがない」のはなぜか
「やることがない」と感じる高齢者の多くは、環境の変化によってさまざまな不安や焦り、寂しい気持ちを抱えながら生活しています。
具体的には、以下のような変化が起こりやすいでしょう。
- 仕事から離れることで生き甲斐を失う
- 大切な家族を亡くして喪失感を抱く
- 老化によって身体が不自由になることに不安を感じる
働くことはそれだけで、人と関わる・頭を使う・動くなど、毎日何かしらの刺激を受けることになります。とくに仕事に生きがいを感じていた人にとっては、職を離れたとたんに何をして過ごせば良いかわからなくなることが多いようです。
また、親や兄弟、パートナーとの死別など、高齢者の方はたくさんの別れを経験している場合が多く、その喪失感から「何もやる気が起きない」という方もいます。
さらに、老化により昔のように体が動かせなくなってしまい、やってみたいことなども難しくなることで「もう自分にはできることがない」というように塞ぎ込んでしまう方もいるかもしれません。
高齢者の方はこれらの要因が重なると、さまざまな事や物への興味関心が薄れて「なにもしない日」が増えてしまうのです。
「やることがない」高齢者に起こりやすい問題
高齢者の方にとって「やることがない」日々が続くことは、認知機能や身体機能の低下に繋がります。ここでは具体的にはどのようなトラブルが起きるのかを紹介していきます。
生活のリズムが崩れる
日中やることがないと、昼夜関係なく横になる時間が増えてしまい、眠くないのに寝床でうとうとすることも多くなるでしょう。
ただでさえ老化によって睡眠の質や時間が短くなるというのに、一日中ダラダラ過ごすことでさらに睡眠バランスが崩れてしまいます。
また、身体を動かすこともほとんどなく、筋力が弱まって身体の使い方がわからなくなるなど、身体機能の低下にも繋がります。
そのため、何をするにしても「つまらない」「面倒くさい」「しんどい」と感じてしまうようになるのです。
さらに昼夜問わず寝ることは、睡眠バランスが崩れるだけでなく、食事の時間や食べる量にもばらつきが出やすくなるため、健康維持が難しくなる可能性も出てくるでしょう。
ちなみに、趣味がある、誰かに会う機会の多い…といった活動的な高齢者の方は、認知機能も高く、幸福を感じやすいと言われています。
対人関係が減る
やることがないと毎日部屋に引き篭もって過ごすことが多くなり、おのずと人との関わりが減っていきます。
とくに一人暮らしをしている高齢者の中には、誰とも会話しない日が数日続くという方もいるでしょう。介護施設を利用する方でも、レクリエーションに参加したがらず部屋に一人でいることを好む人も珍しくはありません。
このように人との関わりが減ると、誰かに自分の意見や気持ちを伝えたり、相手の話を聞く機会もなくなります。
そのため脳への刺激も減ってしまい、認知機能の低下や認知症を患ったりする可能性が高くなるのです。
自分への関心が薄れる
やることがない毎日を過ごしていると、好きなもの・興味のあるものがどんどん減っていき、次第に自分自身への関心も薄れていきます。
その状態が続くと、「やりたいことがない」「生きていても楽しくない」など、鬱のような症状に繋がる恐れもあるでしょう。
ただし、本人が「やることがない」と悩んでいる段階であれば、まだ「何かしたい」という気持ちが残っているかもしれません。
完全に意欲を失ってしまう前に、介護士や家族が高齢者の方としっかりコミュニケーションをとり、興味のあることやできることを引き出すことが大切です。
関連記事:「高齢者とのコミュニケーションにおすすめの方法は?コツや注意点も紹介!」
高齢者の「やりたいこと」を見つける方法
ここからは、やることがない高齢者の方の「やりたいこと」を見つける方法を紹介します。ただし、無理に興味を引き出そうとするのは禁物です。高齢者の方の負担にならないよう、様子を見ながら見つけていきましょう。
無意識の中から好きなことを見つける
やりたいことを見つけるとき、「何がなんでも見つけなければ…」と思って探すのはよくありません。楽しいことを見つけるはずが、逆にストレスとなってしまうことがあるからです。
まずは、日々の何気ない行動や習慣からヒントを探してみましょう。
たとえば「テレビで食べ歩き番組をつい見てしまう」という場合、「なぜ見てしまうのか?」について細かく気持ちを整理していきます。
- 誰かと楽しく食事をしたいのか?
- 本当はいろんな料理を食べたいのか?
- できそうな料理があれば作ってみたいのか?
- 人がおいしそうに食べている様子を見るのが好きなのか?
このように高齢者の方が自分の気持ちに向き合うことには、これまで気づかなかった興味や関心が見えるようになる可能性があるのです。また、自分の行動に意識を向けること自体に脳を刺激するという作用が期待できるため、好きなことが見つからなくても焦る必要はないでしょう。
ただし、介護職員や家族が、高齢者の方の好きなことを引き出そうとするあまり「なぜ?どうしてそう思うの?」など質問攻めにしたり、「さっそくやってみましょう!」と無理に行動させるようなことは絶対にしないでください。
高齢者の方のストレスにならない程度に、自分について知ること・知ろうと思う気持ちが持てるよう、手助けすることがポイントです。
過去の思い出から見つける
昔の楽しかった思い出や印象的な出来事などから、興味のあることを見つけるのも一つの方法です。
「旅行で訪れた京都の街並みに感動した」「着飾って友達と出かけるのが好きだった」など、いま思い出しても心が動くような出来事の中には、たくさんの新しい発見があるかもしれません。
たとえば、「景色に感動した」「おしゃれして心が躍った」という気持ちに焦点を当ててみましょう。
すると、風景画を描いてみる、カメラで街並みを撮影してみる、口紅やネイルをつけてみる、など、過去の気持ちからどんなことができるか、さまざまなアイディアが浮かぶはずです。
なお、高齢者本人が1人で、昔の思い出から「やってみたいこと」を探すのももちろん良いですが、可能であれば、誰かと一緒に話しながら進めるようにしてください。その方がたくさんの案が出てくるはずです。
また、昔の思い出を話したり聞いたりすることは「回想法」という一種のコミュニケーション方法で、脳への刺激や精神的な安定が得られるという効果が期待できます。
そのため、過去の思い出から「好きなもの」を見つける際は、ぜひ2人以上で行ってみてください。
簡単なものから試してみる
高齢者の方のやりたいことがなかなか見つからない場合、まずは簡単なことから試してみるのがおすすめです。
たとえば、窓辺で日光浴をする、ベランダや庭に出て外気浴をする、ほかの利用者の方のレクリエーションを見学するなど、ハードルの低いものから始めてみましょう。
そこから「もっとこうしたい」「自分もやってみたい」などの気持ちが出てくるかもしれません。
また、「やることがない」と一度塞ぎ込んでしまった高齢者の方に、あれもこれも提案したくなりますが、なかなか受け入れてもらえないことがほとんどです。
この状況が続くと「もう声すらかけてこないでほしい」となる可能性もあるため、何でもかんでも勧めることはやめましょう。
まずは高齢者の方の体調や様子、生活リズムに合わせながら、簡単なことから少しずつ試してみることが大切です。
やることがない高齢者におすすめの過ごし方
ここからは、介護施設でよく行われるレクリエーションを参考に、高齢者の方におすすめの過ごし方・楽しみ方を簡単に紹介します。
みんなで楽しめる過ごし方
誰かと一緒になにかをすることが苦手でなければ、次のような過ごし方がおすすめです。
- カラオケ
- 異世代交流
- 伝言ゲーム
- イントロクイズ
いずれも難しいルールはなく、誰でも簡単に参加できるので、レクリエーション初心者の方でも安心して楽しめるでしょう。
また、誰かと力を合わせて楽しむ風船バレーなどのチームプレイゲームも人気があります。
体を動かすこと・他者と関わることの両方が一度でできるため、身体機能や認知機能にも良い影響が期待できるでしょう。
ゆっくり楽しめる過ごし方
ゆっくりしながら楽しめる過ごし方には、次のようなものがおすすめです。
- 家庭菜園・ガーデニング
- 映画鑑賞・読書
- 音楽鑑賞
- 福祉メイク・ネイル
大人数で何かをするのが苦手な人でも、上記のような過ごし方であれば自分のペースで楽しむことができます。
福祉メイクやネイルに関しては、人に施してもらうものなので、コミュニケーションを取る機会にもなるでしょう。
また、仕上がったメイクやネイルを見て得られる高揚感から、昔の自分に戻ったような気持ちになったり前向きな気持ちになりやすいため、高齢者の方の自信にも繋がります。
高齢者の「やることがない」は危険のサイン!一緒に楽しみを見つけていこう
やることがないと悩む高齢者の方の多くは、老化や病気、大切な人との別れなど、さまざまなことがきっかけで物事に対する意欲が低下しています。
そのため自分が何をしたいのか、何に興味があるのかも分からなくなり、結果として「やることがない」状況に陥りやすいのです。
まずは、どんなに些細なことでも良いので、その方の好きなものを見つけ、生きることの楽しさを再び感じてもらえるよう手助けをしていきましょう。
私たち日本保健福祉ネイリスト協会では、2012年の活動開始以来、福祉ネイルという美容を通じて、高齢者の方が輝きある日々を送れるようサポートしてきました。
ご利用者の中には、毎日生き甲斐を見出せず過ごしているという方もおられます。しかし、きれいに彩られたネイルを見て「長生きしていて良かった」「こんなに楽しいことがあるなんて!」と、多くの喜びの声をいただいてきました。
そんな福祉ネイルでもっと多くの高齢者の方の笑顔が増えるよう、私たちは福祉ネイリストの育成や福祉ネイルの研究集会にも力を入れております。「施設に美容サービスを導入したい」とお考えの際は、ぜひ日本保健福祉ネイリスト協会にご相談ください。
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